日本初の常設サーキット場として戦前、多摩川河川敷に開設された多摩川スピードウェイ。国土交通省が進める河川敷の堤防強化工事の詳細が7月に川崎市へ通達され、跡地を取り壊す計画が判明した。これを受け、市民グループが21日、市役所で記者会見を開き、治水と跡地保存の両立を求めた。
工事計画は今年4月、京浜河川事務所のホームページで公表され今月、設計図など詳細が分かった。今年10月から着工し、現存する多摩川スピードウェイの観客席を完全に取り壊し、盛り土や連接ブロックにより新たな堤防を造る計画だ。
丸子橋上流の東横線鉄橋近くにあった同所は、1936年から38年にかけて計4回の全日本自動車競走大会が行われた。第1回大会にはホンダの創業者・本田宗一郎氏が参戦するなど、戦後の自動車産業を支えた人々が多く携わる場所だった。
記者会見を開いたのは歴史的意義を発信する「多摩川スピードウェイの会」。副会長の小林大樹さん(52)は、「自動車産業はじまりの場ともいえる歴史的価値のある場所。今の一方的な通達ではなく残す方法を一度、一緒に考えてほしい」と話す。同会は工事計画に対し、新たな堤防の上に観客席を改めて設置したり、部分的に残す方法等を提案中だ。
川崎市は2016年に策定した「新多摩川プラン」で歴史的資源として跡地の保存を明記している。市担当者は「治水が優先だが、保存に向けても調整が必要」との認識を示した。
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