優れた技術や技能を持ち、後継者や若手の指導に熱心な現役の職人に川崎市が贈る称号「かわさきマイスター」。先月19日、今年度の5人が発表され、中原区からは(株)長津製作所(中丸子)の工場長・野々川晶三さん(59)が選ばれた。
野々川さんは愛知県出身。工業の専門学校を卒業後、デジタルカメラやプロジェクターなどのプラスチック精密金型を製作する同社に入社した。作業はミクロンレベルなため顕微鏡を使いながら微細な磨きや鋭いエッジを表現。老眼が進んでからは、指先や作業中の音を聞き分ける感覚が研ぎ澄まされたという。
入社当初はミスが多く、夜も眠れない日々だったと振り返る。「向いていない」と5年目で辞表を提出するが、慕っていた先輩たちから引き留められ腹を決めた。「人と同じでは追い抜かれる。人の倍働いてようやく一人前だ」。中途半端が嫌いな性格。休日返上で働いた。
部下育成は「恩返し」
努力が実り、40代後半で中国工場の立ち上げに抜擢。16年に帰国すると工場長を任された。50人の部下を持つ今、心掛けていることはコミュニケーションとメンタルケア。「技能の伝承の前に、やる気を持ってもらわないと意味がない」。過去の自分のような残業漬けの日々を押し付けるつもりはなく、50通りの教え方をしたいという。「今は部下の成長が一番。先輩たちに助けてもらった恩返し」と語る。
自身の目標は、父が現役だった「72歳」を超えること。「働いてないと不安になる性分。まだまだ頑張りたい」
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