川崎郷土・市民劇『百年への贈り物―川崎市誕生ものがたり―』で主役を演じる 高橋 宏和さん 多摩区在住 52歳
演じてつなげる川崎愛
○…川崎市の誕生を題材にした市民劇で主人公の初代市長・石井泰助役を演じる。抜擢されたときは「まさか、自分が」と驚きを隠せなかった。市制100周年という節目の公演に「やりがいが大きく、役者冥利に尽きる。成功させたい」。奮い立つ気持ちが、のしかかってくるプレッシャーを上回っているようだ。稽古を重ねると、石井の”川崎愛”が時を超えて感じられた。「ここに住んでいて、よかった。見た人に地元愛が芽生えたら」。そんな思いを胸に秘め、舞台に立つ。
○…高校時代に見た映画『いまを生きる』に感銘。人の心を揺さぶる役者という仕事を志す。音楽にも没頭したが「ロックスターにもなれる」と演技の道へ。都内の小劇場で腕を磨いた。チケット販売や道具作りなど、あらゆる裏方仕事も。がむしゃらに前だけを見て若き日々を走り抜けた。
○…住み慣れた川崎に目線が向き始めた40代。「こんなのあるみたいよ」。川崎郷土・市民劇を教えてくれたのは母だった。「最初は役者になることを反対された」と振り返る。それでもいつも客席には母の姿があった。2017年の『南武線誕生物語』に初参加、自身4回目となる今回、主役を射止めた。演出家やスタッフが芝居を支えてくれる。「恵まれた環境で、集中できる。多様なメンバーが集い、味わいがある」と市民劇の魅力を語る。
○…去年は最高の年だったという。「阪神が優勝したからね」と、物心ついたときからの大ファンだ。両親に記念グッズをプレゼント、一緒に祝杯をあげた。役者としては、応援される側。「しんどいこともあるけど。大きな拍手をもらうと、報われる」とにこり。心の赴くまま、惹かれることに純粋に、これからも生きていく。
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