市政レポートNo.171 死亡事故の教訓はどこへ?療育センター再委託の疑問 みらい川崎市議会議員団 副団長(政策調査担当) おしもとよしじ
過去、川崎市の中央療育センターで障害児の死亡事故を発生させた社会福祉法人へ、北部地域療育センター(麻生区)の運営を再度委託する議案について、我が会派は、指定管理者選定評価委員会(以下、同委員会)の議論も不十分であり、市当局のモニタリングも十分機能していないため「安全性が担保できず不適格」と判断し反対票を投じました。
議案審査にて同委員会の審査結果の詳細を質疑した結果、死亡事故から7年半もの時間を要し公表された事故検証報告書の内容が同委員会の中で、「一切、触れていなかった」事実が明らかとなりました。本来、死亡事故を経て当該法人の組織管理体制やコンプライアンス遵守の改善を確認するのが選定評価委員の役割であり、「安全性の担保に関する議論の欠落は、議案を判断するだけの十分な内容や根拠が議会に示されていない」と指摘。また、同委員らに事前に提案資料を配布しましたが、肝心な事故検証報告書は「HPに掲載しているため確認する事を伝えたものの示してはいない」事や提案資料に基づく事前説明も「半数が電話で済ませた」事、現場に足すら運んでいない実態も判明しました。
また、当局のモニタリングの不作為は、議案審議中の9月上旬に北部地域療育センターにて当該法人が起こした個人情報漏洩事案でも散見され、その改善状況を質すと当初、「当該施設において、職員の情報セキュリティに関する研修は確認できた」と答弁。しかし、確認内容を再度、質した所、「報告レベルの確認であり、実施状況を確認したわけではない」という疎かな中身で、仕様書や基本協定書の履行状況を確認するモニタリングの基本が、十分機能しているとは言い難い状況でした。事故検証報告書には「効果的なモニタリングや指導等を通じて、施設における安全の確保や事故防止に取組む」旨、記載されているにも関わらず、事故の教訓を活かし、その責務を果たしているのか甚だ疑問でなりません。
採決の結果、反対票27、自民・公明・維新会派の賛成票32と稀に見る僅差により議案は可決されました。当該法人の運営施設において、前述の死亡事故や情報漏洩をはじめ、高津区のグループホームで職員が利用者の財産約1千万円を横領する事件や中央療育センターでの性的虐待事件、横浜市障害者入所施設及び東京都の知的障害者入居施設でも虐待事件が発生するなど事故と不祥事は枚挙にいとまがなく、今後、同様の事故や不祥事が発生した場合、利用する児童や保護者に対し一体誰が責任をとるのか。これからも我が会派が求めてきた当該法人への年度評価における改善状況や行政当局の指導・モニタリング機能の発揮、選定評価委員会の抜本的な見直しを注視し促していく事が議会の責務であると強く胸に刻み取組に邁進して参ります。
|
|
|
|
|
|
|
<PR>
11月15日