地域で大切に守られてきた文化財に光を当てる「川崎市地域文化財」に、川崎市は新たに安楽寺の半鐘(下小田中)など24件を決定し、昨年12月25日に発表した。
「川崎市地域文化財顕彰制度」は市が2017年に創設。法的な文化財としては指定・登録されていないが、地域の生活や風土に根ざして継承された建造物や民俗文化などを市民が推薦し、市の文化財審議会でのヒアリングを経て、市教育委員会が「地域文化財」として決定する。
今回新たに加わったのは有形文化財11件と有形民俗文化財13件の計24件で、累計264件となった。中原区からは「安楽寺半鐘」「下小田中安楽寺周辺の念仏講用具」「西明寺の弘法大師供養塔」「西明寺の木食観正碑」の4件が加わった。
地域で信仰
「安楽寺半鐘」は、江戸時代半ばに作られたもので、念仏講を信仰していた人たちが奉納。鐘の部分に信仰者の名前などが記されており、戦後には火の見やぐらなどで使われていた。「念仏講用具」は、下小田中の人たちが集まり、平成の中頃まで念仏講で使われていた道具。数人が輪になって持てるほどの長さの数珠は、一つひとつの珠に信仰者の戒名や名前などが刻まれており、地域の信仰の様相がわかる資料として決定された。
市域で唯一
「西明寺の弘法大師供養塔」は、参道入り口に建つ高さ3mの石塔で、四国八十八処の巡礼を終えた人たちが、先祖供養とともに子孫らの幸せを願って建てられた。西明寺前は小杉御殿の防衛のために工夫された中原街道のカギ道で、同碑は地域のランドマークの役割を果たしてきた。「西明寺の木食観正碑」は、1818年に小田原に現れた各地を巡る遊行僧・木食観正の碑。結縁した人たちによって建立され、市域では同寺にあるのみ。碑の背面等には、小杉村や近隣の村などさまざまな人の名が列記されており、近世後期の民衆の信仰のようすを残す貴重な資料だという。
市の担当者は「都市化が進む市内にも多様な文化財が残されている。地域の文化や歴史を知り、愛着を持ってほしい」と話す。詳細は市教委文化財課のウェブサイト。
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