法政二高物理部(顧問/上山勉教諭)は、2月22日(土)から24日(月)に和歌山県で行われる「缶サット甲子園全国大会」に向けて、準備を進めている。3年連続7度目の優勝を目指す。
同大会はJAXAなどがバックアップし、2009年にスタート。空き缶サイズの模擬人工衛星「缶サット」を上空に打ち上げ、どんな機能をつけ、何をどのように観測するのかなどのアイデアと技術力が評価のポイントとなる。同校は昨年11月の関東大会に出場し、優勝。全国大会への切符を手に入れた。
昨年4月から部員同士で、缶サットを作る上でのテーマを議論。これまで同部では歴代、「人命救助」を大きなテーマとして缶サットを製作してきた。その中で今回は「山岳救助」をテーマに選んだ。23年に山での遭難者数が3568人と、統計が残っている1961年以降過去最高に達したことや、標高が2000mを超えると捜索に時間がかかるという問題があることを知ったことが理由だ。
夏頃から模擬人工衛星づくりを開始。リーダーを務めた鈴木友菜さん(2年)は「どんな機能を缶本体に入れるかで、意見が食い違うこともあって大変だった」と苦笑い。本体には通信機能を搭載し、山奥のネット環境がない場所でも遭難者とのコミュニケーションを可能にした。遭難者は自身の携帯から独自のウェブサイトに接続。チャット機能を活用し、救助者にけがの有無や付近の環境、目標物を伝えることができる。またリアルタイムで位置情報も取得し、救助隊向けウェブサイトに公開。捜索時間を短縮し、チャット機能を通じて遭難者を精神的に支えることができる仕組みを作った。篠原慧護さん(2年)は「完成したのは大会前日でギリギリだったので、ちゃんと飛ぶか不安だった」と振り返る。
何とか間に合わせて臨んだ関東大会当日。直前まで本体の調整を行う中で、予定していた部品が入らないというハプニングもあったが、最後まで諦めずに乗り越え、連覇を果たした。鈴木さんは「チームで作ることで、いろんな知識を作品に結集できるのが缶サットの魅力。全国大会もみんなが納得した形でやりきりたい」と意気込んだ。
先輩からエールも
同部のOBも現役部員にエールを送る。山下貴史さん(28)は13年10月、伊豆大島で起きた土砂災害で祖父母を亡くした。これを機に、山下さんは10年前、缶サットのテーマに初めて「人命救助」を選んだ。これが今でも後輩たちに引き継がれている。
山下さんと当時部長を務めていた鈴木晴樹さん、生田薫平さんは2基の缶サットを製作。1基は被災者の状況を上空から撮影し、被災者の場所を特定。現場の状況や様子、救難信号などの把握をもう1基の缶サットが担うことで、「人命救助」への新たな道筋を提案。初めて全国優勝を果たし、米国ネバダ州で開催された世界大会にも参加している。鈴木さんは「出来ないと思っても、取りあえず何事も挑戦することが大事。一生懸命に取り組んでほしい」と話した。
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