▼5日、中原区の中原平和公園で実施されたヘイトスピーチ(憎悪と差別の扇動表現)デモが途中で中止された。市民団体が体を張り、差別主義者の行く手を阻んだ成果と同時に、先月24日に成立し、3日から施行された「ヘイトスピーチ解消法」の力でもある。
▼ヘイト解消法は、特定の人種や民族に対し、差別を煽り立てることは許されないことを定める。1995年に国連人種差別撤廃条約を批准しながらも長年対策を放置してきた国が初めて民族差別を認め、ヘイトスピーチは許されないことを規定した点に意義がある。成立を後押ししたのは、桜本地域を中心としたコリアンルーツの市民の人権被害の訴えだ。川崎市では2013年以降、十数回のヘイトデモが行われ、昨年11月と1月にはコリアン集住地域の桜本地区がターゲットにされ、在日コリアンの心を傷つけた。3月に川崎駅前で行われた演説ではヘイトスピーチに抗議した男性を殴った差別主義者が逮捕される暴行事件も発生した。事態が深刻化する一方、市民有志が反ヘイトのネットワークを組織し、市民の輪を広げながら、行政へ、議会へ、メディアへと様々な働きかけを行った。在日コリアンの訴えは国会議員の心を動かし、法成立にまでこぎつけた。
▼同法成立後、ヘイト団体はすぐさま川崎区での新たなデモを川崎市に申請したが、市は公園使用不許可の通知を出した。6月2日には横浜地裁川崎支部もヘイトスピーチを不法行為として桜本地区接近禁止の仮処分決定を下した。ヘイト団は川崎区でのデモを断念し、今度は中原区に場所を替え、県警に道路使用許可を申請し、デモを強行しようとしたのである。
▼道路使用許可を下した県警の判断の是非は議論が分かれるが、デモ当日の警察の行動は「ヘイトスピーチを許さない」姿勢を示したといえよう。法成立後の行政、司法の取り組みはヘイト根絶に向け、他の自治体にモデルを示したとの指摘は頷ける。ヘイトスピーチに対峙する川崎市民の一連の取り組みはまさに、川崎市が標榜する「シビックプライド(市民の誇り)」に通じる。ヘイト根絶に向け自治体の啓発、教育活動が重要となるが、市民にはこうした取り組みの事実を伝えてもらいたい。
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