高齢者介護施設・のんびりーす等々力(上小田中)に、昭和の時代や過去の出来事が収録された書籍や動画を集めた文庫が設置された。考案したのは、沖縄国際大学の学生ら。認知症の進行予防にもつながる「回想法」に着目し、施設利用者の様子や変化など効果を検証しながら、社会の課題解決を目指す。
「昭和のお菓子」「永遠のミスター」「石原裕次郎」――。一時代を築き、興味をそそるタイトルがつけられた書籍の数々。11月27日、バナナ園グループが運営する「のんびりーす等々力」を訪れた沖縄国際大学(宜野湾市)図書館情報学のゼミ生11人が、自ら選書した本を集めた図書コーナーを設置した。沖縄のイメージと安らぎをもたらそうと、「太陽と森とことりの文庫」と命名し、ポップを貼るなどの工夫も。完成した文庫を目にした施設利用者は、早速本を手に取り、興味深そうにページをめくっていた。
オンラインで打合せ重ね
きっかけは昨年、同大学ゼミの卒業生で現在同施設で働く仲田ひな子さん(27)が、現役のゼミ生と連絡を取り合ったこと。認知症と本に関する研究を進めていることを知り、コロナで外出が制限され頭を悩ませていた施設側との思いが重なり、産学連携で取り組むことが決まった。これまでオンラインによる打合せを重ね、この日初めて施設で学生との対面が実現。仲田さんは「利用者の活動が制限され、テレビに頼るような毎日だった。昔懐かしい本に触れることで認知症予防が期待できる取り組みを、母校の後輩とできるのはうれしい」と思いを込める。ゼミの中心メンバーとして活動してきた浦崎はるなさん(4年)は「最初は身近に認知症の人がいなくて、どんな症状かも分からなかった。仲田さんと連絡を取り合ううちに学びを深め、研究を重ね本を選ぶことができた」と振り返った。
回想法で笑顔と記憶を
今回の取り組みで検証するのは、認知症の高齢者が本や動画を目にすることで昔を思い出し認知機能の維持につながると期待される「回想法」。笑顔や記憶を呼び戻し、認知症の予防や進行抑制を目指したい考え。学生と訪れた同ゼミの山口真也教授は「この試験的取り組みの効果検証を行い、研究成果として発信していきたい」と話す。
バナナ園グループの矢野達郎代表は「65歳以上の4人に1人が認知症の予備軍と言われる。この取り組みの成果が立証できれば、市内や社会にも有効活用できるのでは」と期待を込める。
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