ペットフードを通じて、福祉作業所で働く障害者の社会参加の機会につなげる取り組み「ワンこめプロジェクト」が区内で進む。創造性のある仕事を提供し、工賃アップに寄与することで経済的にも後押ししたい考えだ。
「ワンこめ」は、ペットの栄養管理士がレシピを手掛けた米農家が作る米粉を使用した低アレルギーな犬用のおやつ。ニーズがあって、作業工程も難しくないことから就労支援施設が抱える課題を解決し、環境改善を促進するという取り組みが全国的に進められている。
このほど中原区でも、福祉作業所おかし工房しいの実(木月伊勢町)で導入。施設長・近松厚志さん(53)は「レシピや材料が提供されるのでロスも出ない。製造には創意工夫が求められ、スタッフも楽しく作業している」と話す。複雑な工程がないことで、これまで単純な作業しかできなかった障害者でも製造に携われることが利点。村山憲一理事長(77)も「障害者らの収入が増えることで経済的な支援の一助となり、自立を後押しできる」と期待。軌道に乗れば、月千個単位で生産することを見込む。
6月から販売
すでに東京都や埼玉県の作業所等では、このプロジェクトで一人当たりの工賃が月額1万程度上がるなど実績もある。区内でブランド戦略に基づくプロモーション設計などを手掛け、プロジェクトを担当する岩崎拓哉さん(53)が地元での製造拠点を探し、川崎市社会福祉協議会から菓子作りに定評のあるしいの実を紹介された。岩崎さんは「試作も順調に進んでいる。6月ごろから販売できれば」と意気込む。
動物病院で紹介
市内で開業する動物病院など67店が加盟する川崎市獣医師会も協力。専務理事の岩佐保宏さん(37)は「ここ10年でペットのアレルギーに敏感な飼い主が増えている」という。福祉分野への関心を高める獣医師会では加盟店に呼び掛け、治療中のおやつや待合室に試食コーナーを置くなどして製品を広くアピールする。製品が作られる背景を理解した上で、会としてできるだけ協力していきたい考えだ。
製品は愛犬家が集まるイベント会場や、ネットショップなどで販売予定。今後は、同工房が培った製造技術を近隣の作業所等へも伝授し、より多くの就労支援施設へ展開していくことが目標という。問い合わせは同プロジェクト事務局までメール(contact@wankome.com)で。
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