「廃油石鹸の輪」次世代へ 市民団体が周知に奔走
麻生区・多摩区の主婦たちからなる「グループせっけんの家」が、市内の学校や家庭で出た使用済みてんぷら油を集め精製した環境に優しい石けんを広めようと奔走している。1970年代から続く活動を追った。
高度経済成長期を迎えたかつての日本は、家庭や工場から出る排水による河川や湖の汚染という問題を抱えていた。川崎市内では1989年、市内の主婦を中心とした約7千人が出資し、川崎区塩浜にリサイクル石けん工場を設立。家庭から出る使用済みてんぷら油を活用した環境に優しい石けんを独自に精製し、再び家庭に届けるという独自の循環ネットワークを築いた。
「グループせっけんの家」はそうして作った石けんを各家庭に広めようと川崎市北部の主婦たちが発足させた団体。小学校での出前授業や勉強会を開いて周知活動を行ってきた。同工場で作られる生成り色の石けん「きなりっこ」は合成界面活性剤などを含まない。現在、市内にある約100校の小学校で食器洗いなどに使用され、川崎市の名産品にも認定されている。
香料洗剤の流行や会員の高齢化で活動中止が危ぶまれたこともあった。代表の藤原美子さんは「環境に対し関心がある人たちだけでなく、もっと多くの人にまずは考えてもらうきっかけを作らなくてはならないと痛感した」と振り返る。現在は、料理教室を企画し皿洗いで石けんを使用してもらう機会を設けたり、水環境を体感する源流見学ツアーを打ち出すなど様々なアイデアで周知の裾野を広げている。
来月からは次世代を担う子どもたちにも水環境について考えるきっかけを提供したいと親子向け食育講座を実施する(中面に関連記事あり)。藤原さんは「石けんを広めるだけでなく、環境教育ということにもチャレンジしていきたい」と話している。
|
|
|
|
|
|