柿生郷土史料館タイアップ企画 柿生文化を読む 第122回 シリーズ「麻生の歴史を探る」民間信仰(6)石造物〜馬頭観音 後編
【前編から続く】高石の法雲寺には馬頭観世音信仰を象徴する典型的な石造2基があります。1基は台座5段の石柱型で高さ2m余、馬頭を表す宝冠を被った三面馬頭観世音菩薩が合掌のお姿であらわれており、安政3年(1856)、橘樹郡高石村馬持講中と記されています。並んで建つもう1基は高さ約3m余、直径約50cmの石造物で、上部には馬頭の宝冠を被る千手観音が合掌の姿で浮彫され、円筒の中央には疾走する7頭の馬が刻まれています。造立は明治15年(1882)で、この頃高石村では競馬が行われており造立者は馬匹組合で地元有志の名が記されています。
一方石柱のみの馬頭観世音と記された文字塔は岡上の丸山(岡上小学校北)に剥離が激しいものの天保10年(1839)造立の銘が読み取れるものが残されており、栗木の京衛(桐光学園東)にも天保15年(1844)、栗木講中と台座に印した文字のみの馬頭観音が在りますが、その多くは明治・大正の個人の造立で形も小さく、今でも草叢にそれを発見することがあります。
上麻生の浄慶寺には、高さ約1・5m、幅約70cm、正面に馬頭観世音と大きく刻まれた板状の文字塔があり、これは日野往還(現横浜上麻生線)の中村橋際にあったもので、台座は道標となっており、左側面には南神奈川道/西八王子道、右側面には東江戸道と刻まれ、台座中央には上麻生講中、文政12年(1829)と記され、幕末のその頃、馬と道がいかに密接だったかを物語っています。
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