2020年の幕開けにあたり、本紙は福田紀彦川崎市長に恒例の新春インタビューを行った。「オリンピックイヤー」を踏まえたまちづくりの方向性を示し、台風など自然災害への課題や対策などについて考えを語った。(聞き手/本紙川崎支社長・有賀友彦)
--昨年を振り返り、手応えを感じた要素、また反省すべき点をお聞かせください。
「昨年川崎市は人口が153万人を超え、政令市第6位となりました。主な動きでは、横浜市営地下鉄3号線(あざみ野駅―新百合ケ丘駅間)の延伸を発表。向ヶ丘遊園跡地の利用方針を示し、登戸の土地区画整理事業も進めました。市の南北にわたり、まちづくりが大きく動き出したという手応えを感じた一年でした。ちょうど世代が入れ替わる時代に川崎市がもう一世代築いていくための新たな要素だと思います。また、ごみの排出量の少なさが政令市で1位になったことも誇りです。人口が増えてまちが発展する中でも1人1日あたりのごみの量を減らせたのは、環境に優しいまちとしての進化を示せたと思います。
一方で、反省点というより都市部の課題と言えますが、5月に登戸刺傷事件が起き、子どもの安全が脅かされました。痛恨の極みです。10月には台風19号が、安心安全であるべき市民生活に甚大な影響を与えました。一昨年の西日本豪雨など異常気象はいつでも起こりうるという意識で、思考や行動を変えていく必要があると感じています」
--台風は主に中原区や高津区、多摩区に爪痕を残しました。今後の課題や対策をどう考えていますか。
「川崎市は多摩川と鶴見川に挟まれ河川災害が発生しやすい地域であることを常に意識しなければなりません。ハザードマップを基に避難訓練、避難所開設訓練などを重ね、意識と備えを養うことが必要です。風水害だけでなく、地震もいつ起こるか分かりません。市でも緊張感をもち対策に努めていきます」
--市民への情報発信のあり方が課題との指摘もあります。
「これまでも土砂災害警戒区域周辺の住民の方には状況を確認していただき、河川周辺の住民には一緒に歩いてもらう取り組みなどを進めてきました。しかし川崎市は単身世帯が4割を超え、若い世代への働きかけも不可欠です。市の防災アプリなどの活用、食料や水などの備蓄など、誰もが被害者になりうるということを教訓として伝えていく必要があります」
--今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが行われます。市としてどんな施策に力を入れ、開催以降にどのようにつなげていこうと考えていますか。
「まさに今年は川崎市がこれまで取り組んできた、障害者・健常者が混ざり合った社会を創ろうという『パラムーブメント』の大きな節目の年。大会とともに盛り上げ、包摂的な社会をみんなで体感し、意識を変えて行動に発展させていきます。これは、今年で終わりではありません。超高齢社会など課題山積の日本で、このパラムーブメントの動きを、いかに日常化させ課題解決につなげていくか。川崎から全国へ、その挑戦を続けていきます」
--川崎市は観光資源が多い一方で、インバウンド(訪日外国人)対策などに生かしきれていないように思えます。
「確かに十分とは言えません。ただ、昨年はユーチューブ(動画共有サービス)で川崎市をPRした動画の再生回数が1470万回を超え、海外のみなさんにも周知できました。川崎市は羽田空港から近く、外国人観光客を受け入れやすい環境が整っています。夜の時間帯や、公園・遊歩道などの公開空地もまだまだ生かせます。すでにあるものを活用し、外国人だけでなく市民にも川崎の魅力を日常的にPRしていきたいと思います」
――2020年をどのような年にしたいか、展望をお聞かせください。
「今年のテーマは『創発』です。1たす1は2ではなく、異なるもの同士を掛け合わせると思いがけず価値あるものが生まれるという意味合いです。川崎市には多様で優れた才能や可能性があふれており、地域の中で掛け合わせていくことで新しい価値を見出し、私たち自らの力で社会課題を解決することができる。企業や団体などがそれぞれの強みや持ち味を生かすことはもちろん、町会活動に学生が参加したり、子どもの学習支援に高齢者の経験を活用する多世代交流も、生きがいや子どもの見守りという『創発』が生まれるきっかけになると思います。オリンピックイヤーだからこそ『創発』できるチャンスです。
もう一つのテーマは『災害に強いまちづくり』です。自助共助、顔の見える関係を地域でつくることが必要だと感じます。昨年の台風は被災地域が限定されているだけに、危機感の温度差があるかもしれませんが、市民の皆さんにどう伝えていくか、先頭に立って行動していきます」
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