黒川の「雲長山 西光寺」(山中聡英住職)にまつられる「薬師如来」の石像。市内に唯一現存するとされる石像の薬師如来だ。現在、市の地域文化財へ申請中で、認可されると区内13番目の地域文化財となる。
西光寺は、1400年ごろに黒川の菩提所として開創された寺院。薬師如来の石像は、1668年7月の造立とされている。作者は「牛哲」で、どのような人物で、どのような経緯で建てられたか、記録が残っていないという。
山中住職によると、孤巌伊俊和尚が西光寺を開山後、しばらく後継者が不在だった寺を、里山可全和尚が1668年当時に復興。住職不在時には、関翁尭鉄蔵主が寺を守ってきた。この関翁尭鉄蔵主がどのような人物だったか、記録が残っていないが、石像が造立された4カ月後の1668年11月23日に亡くなっている。
また一般的に、寺に何かを寄進する際には、必ず施主名が記載され、住職が自ら造ったものには何も記さない。そうした記録などから、山中住職は「里山可全大和尚様が関翁尭鉄蔵主様を大変大事に慕われていたのでは。その関翁尭鉄蔵主様が病にふされ、そのご快癒を願ってまつられた」と推察する。
この薬師如来は、古くから病に苦しむ村人が像に触れ、手を合わせると病気が治ったと言い伝えられており、今でも病気やけがの回復を願い、多くの人がお参りに訪れているという。
「当時の方々にご恩返し」
川崎市が、1979年に市内の神社仏閣と、所蔵品を調査した結果、市内で唯一現存する石像の薬師如来であることが判明。川崎市教育委員会が2017年に創設した「川崎市地域文化財顕彰制度」に推薦されることに。境内の一角にまつられていたため、盗難防止のために、お堂を整備することを総代会役員会で決定。19年に完成し、今年6月に申請した。決定は、今年11月ごろに予定されている。
山中住職は「認定されれば、お堂の整備を含めて、当時、造立した和尚様をはじめとした方々にもご恩返しができる。これからも、ぜひ願いを込めてお参りに来ていただければ」と話している。
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