片平にあるサッカーJ1・川崎フロンターレの練習場「麻生グラウンド」。目の前にある茅ぶき屋根が特徴のそば・うどん店「櫻屋」が12月19日(日)に閉店する。1989年に現在の店舗に移って32年。地域やフロンターレの選手たちからも愛された店の暖簾が惜しまれつつ下ろされる。
創業は戦後すぐ
創業者で先代の故・会田一良さんが、戦後すぐに祐天寺(東京都目黒区)で食料品や乾物、菓子などの行商を始めた。「若くして戦争に出征し、食べるために始めたみたいです」と現社長の松村美枝子さん(76)。その後、渋谷で店舗を構え、商売は軌道に乗っていったという。当時、現店舗を別荘代わりとして、先代が店の従業員を連れて遊びに来ていた。渋谷の店舗が開発によって立ち退きに迫られ、その片平でそば・うどんの店を開くことに。松村さんは「先代が食べ歩いて研究し、自己流で始めたようです」と振り返る。
総菜を好きなだけ食べられる「おばんざい」も人気で店の特徴となった。残っていた乾物を食べてもらおうと思ったことが原点だ。「お汁粉やコーヒーもサービスで出していました。駅から遠い場所だから、せっかく来てもらったからという思いがあったみたい。サービス精神旺盛で、お客さんが喜ぶ顔や中庭で一緒に話をすることが何よりうれしかったそうです」と松村さんは先代の思い出を語る。
昇格時にパーティー
フロンターレの選手たちもよく食事に訪れていた。J2からJ1に昇格したときには、チームが店で昇格パーティーを開いたことも。「多くの選手が来てくれましたね。中村憲剛さんは家族で来てくれていました」。今でも、元監督や選手と交流も続けている。松村さんは「チームと一緒に店も歩んできましたから。今年も優勝してうれしいです」と笑顔で語る。
移転を視野に
今年5月に会田さんが逝去。会田さんといとこだった母親が店を手伝っていた縁から、店を手伝い始めた松村さんが跡を継いだ。しばらく店を続けてきたが、会田さんの遺言に沿って店をたたむことに。「お客さんがさみしがってくれていて、本当にありがたいです。残念ですけどね」
現在、店で働く竹田直仁さん(51)が中心となって、新店舗を構えることを模索中。武田さんは「長い歴史のある店の暖簾を残したくて。いつ、どこでになるかはまだ分かりません」と思いを語る。
松村さんは「皆さんに長い間『櫻屋』を愛してもらって感謝しています。良い報告ができるように進めていきたい」と話している。
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