柿生中学校内にある「柿生郷土史料館」が、1862年から63(文久2〜3)年に王禅寺村の村役人が領主などからの通達を書き留めた「御用留(ごようどめ)」を読み解き、このほど発行した。郷土史料を中心とした古記録・古文書を読む会が作業をしたもので、幕末の情勢と村の関係が見えてくる。
御用留とは、幕府や領主からの通達や触書などのいわゆる公用文書、村からの願いや届けなどを控えた帳面。今回発行されたのは、王禅寺村の領主である増上寺や、関東一円を取り締まっていた出役から出された廻状や触書などを名主(村の長)・志村文之丞が書き留めたものだ。原本は、享保期から断片的に数十冊残る御用留の一冊で、志村家が所蔵する。
書かれた内容から、時代が変わっていく幕末期に、王禅寺や近隣の村にはどのようなことが伝わり、村はどう関わってきたかが浮かび上がる。1863年3月、12代将軍・家茂が京都に渡る際には、伝馬を差し出すよう依頼されるが、王禅寺村はその依頼を断ったことが記載されている。
市民の生活にも言及され、喜八という者が早野村や王禅寺村、下麻生村で盗みを働き、村役人が役所に差し出すことなども書かれている。
「庶民の力強さ感じる」
御用留を読み解いたのは、同館の古文書講座の受講者たちだ。講座で御用留の翻刻が終わった際に、書籍化を発案。内容を精査し、5年以上費やして発行に至った。編集委員はあとがきで「庶民の生活に密着した文書に、当時の人々の生活の苦労や力強さを感じると共に、こうした文書を残してきた王禅寺村の歴史の重みも改めて感じる」と記している。
同館として初めて発行した書籍。同館解説委員の小林基男さんは「今後、大学の研究資料などに活用されれば」と話す。閲覧などの問合せは同館(詳細はHP)。
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