ふるさと納税制度による市税の流出が止まらない川崎市は、納税返礼品として市内の宿泊施設などで使える電子商品券を4月から導入する。寄付受け入れ額の確保に加え、観光客誘致につなげたい考えだ。
市が導入する電子商品券は、利用対象施設で二次元コードを通じてふるさと納税をしてもらい、納税額の3割相当のポイントを「商品券」として付与するもの。市の担当者は「観光庁が実施した『Go To事業』のしくみのふるさと納税版」と説明する。
例えば市内のホテルに宿泊した際、決済時にフロントに設置された二次元コードで一定額を納税すると、その納税金額が宿泊費の全額か一部にあてられ、3割分の電子商品券が付与される。
まずは返礼品目に登録済みの宿泊施設やゴルフ場での運用を目指し、徐々に対象施設を広げ、観光客誘致の呼び水となるよう観光ツアーなどにも適用する方針。商品券が使える施設や事業者も調整中という。
膨らむ税流出
ふるさと納税制度による市の損失にあたる住民税の流出額は2022年度に100億円を超える104億円に達し、24年度には142億円となる見通しが示された。一方の寄付受け入れ額は確定している22年度で約6億3千万円。流出額を補うには遠く及ばず、福田紀彦市長は24年度の当初予算案の会見で「具体策はこれからだが、あらゆる手を尽くす」と危機感をあらわにしていた。
市は関係部局で「稼げる返礼品」の開発を進めており、今の電子商品券はその第1弾だ。24年度予算案には既存のサイトの運用費なども含めた「ふるさと納税事業関係経費」として、前年度より約3億4千万円多い8億2514万8千円を計上した。
単価の低さ課題
現在、市はふるさと納税の返礼品として約450種類の品を登録。このうち人気が高い返礼品としては、トイレットペーパーや衣料用洗剤、食器用洗剤など日用品が多い。市の担当者は「生活必需品なので繰り返し購入して頂ける率は高い」と話すが、日用品は単価の低さが課題でもある。
一方で高額な返礼品も購入件数が伸びにくいため、市は事業者と検討を重ね、新商品を加えるなどの試みを続ける。その一例が、9万5千円の納税で入手できる多摩電子工業(麻生区)の「ポータブル電源」だ。キャンプブームを視野に入れた30万円台や60万円台のポータブル電源を既存の返礼品として登録済みだが、市の要請で10万円以内で購入可能な商品を開発。昨年11月から返礼品に加えたところ人気は上々だという。
市の担当者は「幅広い人に納税していただけるよう分析を続けていく」と話している。
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