市内在住塩屋俊監督 被災地の現実を映画に 相馬市で別作品の準備が一転
「ろう城」の市長と市民を記録に
市内在住の映画監督、塩屋俊さんが東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県相馬市でドキュメンタリー映画を撮る準備を進めている。昨年7月から伝統文化「相馬野馬追」を描いたフィクション作品の準備を進めていた矢先に震災が発生。カメラは急きょ、地震に津波、原発問題と何重苦にも遭いながら、それに立ち向かう相馬市民に向けられた。
「まさに地獄絵のような世界」。先月25日に相馬市に入った塩屋監督は被災地の印象をこう語った。
相馬市は福島県の北部、太平洋側に位置する。3月11日の東日本大震災による地震と津波で沿岸部のまちが甚大な被害を受けた。さらに福島第一原発から45キロという距離。放射能への不安が市民生活を脅かしているという。
塩屋監督と相馬市の出会いは上映会がきっかけ。映画館がない相馬市に映画を誘致したいという立谷秀清市長の呼びかけで09年に塩屋監督の作品「0(ゼロ)からの風」が上映され、今年1月にも「ふたたび」が上映された。市民2500人が鑑賞したという。そんな交流が深まり、市長と地元の騎馬会から国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」を題材にした映画製作の要望があった。
大震災は撮影準備を進めている矢先だった。
震災後、立谷市長はメールマガジンで津波や地震で犠牲になった市民や消防団員への思いを綴り、郷土を再建するため、「ろう城」を宣言。南相馬市から避難者を受け入れ、市民に団結を呼びかけた。
「悲しみをしまい込み、文句も言わず、調和を保つ人々の姿を目の当たりにした。頑張っている人々の記録を残したい」と塩屋監督。一方、「高齢者や様々な事情を抱えて動きたくても動けない災害弱者がいることが報道では伝えられていない。この現実を伝えたい」とも話す。
ドキュメンタリー作品は市長からの要請があり、映画化する計画で、フィクション作品と同時に製作するという。
「映像に関わるものとして傍観者ではいられない。原発は私たちの文明が残した大きな問題。映画はどんな結末になるのかわからない」。今月8日、被災地の相馬市に再度向かった。
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