一人で何役もこなし、朗読や歌を織り交ぜながら芝居をする「一人芝居」―。
区内高石在住の大谷彌生さんは、この「一人芝居」を自身の生きる活力とし、また観る人にもエネルギーを与え続けている。
「やばいくらい」の語り手に
「やばいくらい面白い語り手になりたい」という思いと、孫から「やあばあちゃん」と呼ばれていることから、愛称は「やばちゃん」。一人芝居の「やばプロジェクト」では2005年の新宿・プーク人形劇場での初演以来、清明学園(大田区)や川崎平和の集い、目黒本町社会教育館などで数多くの公演を重ねてきたほか、朗読教室の「木の葉ずく」、ワークショップシアターの「かもめ°45」も手掛ける。
もともとは若い頃から役者を志ざし、一人芝居に目覚めるまでは演劇の舞台で客演などをやっていた。しかし、劇作家に書き下ろしてもらった一人芝居の作品「ヒロシマのホタル」との出会いがターニングポイントとなった。「人を演じ、何人もの人生を生きることが好きなのかもしれない」と、一人芝居の世界へのめり込んでいく。占い師のおばあさんが夫をピカで失うという物語を1人6役で届ける「ヒロシマのホタル」は代表的な作品となり、清明学園では中学2年の子どもたちの心もつかみ、夢中にさせ、昨年で7回目となる公演を行った。
「子どもたちがはじめて一人芝居を観て、夢中になって喜んでくれる。一生のライフワーク」と語る。
全力で”なりきる”
身振り手振り、体全身を使いながら、豊かな表情で人や動物、モノになりきる大谷さん。時には、扇風機やストーブなど一人芝居の持ちネタはおよそ60本にも及ぶという。「家電のように壊れていくものには味がある」と微笑む。始めた当初は演出家が付いていたが、今では構成も演出も自身で考える。
最近では、自宅近くを走るコミュニティ交通「山ゆり号」を支援しようと、売上金を寄付するために鶴川の「可喜庵」でも公演を行い、太宰治の「お伽草紙」の中にある「カチカチ山」を披露。それを観た男性の一人が「俺もちゃんとしなきゃ」と感化されて帰って行ったという。体一つだが、何より魂を込め、全力で演じる大谷さんのパワーが観る者の心に突き刺さり、深層心理に迫り、また想像力も掻き立てる。
大谷さんは「元気の秘訣も一人芝居。みんな一人芝居をやってみたらいい。今後は表現者として、役者として何かお手伝いできたらうれしい」と語る。先月には、自宅からほど近いデイサービスの「さくらの丘」で歌やリズムに合わせた運動で利用者を楽しませた。
今日も何を演じてやろうかと思いを巡らせる。
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