「無精卵」から子ガメが生まれた――?
大島在住の久保田宗孝さん(56)が飼育しているカメが生んだ卵が、今年5月に孵化した。外部のオスガメとの接触は考えられない隔離した空間に、1匹のみで飼育されているため「カメが単独で生殖することなんてあり得るのか」と疑問に思った久保田さんから、本紙に取材依頼があった。
「カメ吉」と名付けられた久保田さん宅のカメは、15年前に多摩川で捕獲し、飼育を続けてきたもので、体の特徴からは「クサガメ」と推定されている。体が大きくなってきた8年前には、自宅庭に石ブロックや金網を使って飼育スペースを設置。甲羅を洗うときやスペース内の清掃時以外では外に出すこともないという。
カメ吉の卵がかえったのは、今回で2回目。2011年にも子ガメが土からはい出しているのを確認。4匹が生まれたが、カメ吉と一緒に飼育するうち、カメ吉に手足を噛みつかれたり、病気にかかったりして衰弱し、全滅したという。
「聞いたことがない例」とカメ専門家
「今までに例のないケースだと思います」。『育てて、しらべる 日本の生きものずかん カメ』(集英社、05年)を監修した愛知学泉大学の矢部隆教授も、そう言って興味を隠さない。
通常、カメは受精後1カ月から半年で土の中に産卵。約1年後に子ガメ自ら殻を破り、地上に這い出す。メスのカメは体内に精子をストックできる「遅延受精」の能力を持っており、受精から3、4年後に産卵するケースもあるが、15年間オスとの接触がないカメから子どもが生まれる例は「30年の研究生活でも聞いたことがない」。
ただし「メスのクサガメが単独で生殖することは、生物学的には不可能ではないこと」とも解説する。性別を決定する性染色体を持たないクサガメは、片方の親のゲノム(染色体のセット)のみで体を作る可能性がある。「例えば、メダカの未受精卵を針でつついたり、50度のお湯にくぐらせたり、電気刺激を与えたりすると、卵の胚発生がある程度進みます。たまごに対する何らかの刺激によって、子ガメが孵化した可能性はあります」
解明は2年後
カメの染色体は通常52本だが「未受精卵の孵化が事実であった場合は、子ガメの染色体の数は26本になっているはず。実際に子ガメの細胞をとって、染色体の数を調べれば、判明することです」と矢部教授。
ただ、子ガメの細胞を採取するためには解剖するか、適当な大きさに成長する2年後まで待つ必要がある。久保田さんは子ガメ6匹を育てていくつもりのため、真相の解明は2年後以降になりそうだ。
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