川崎競馬場に寄贈された絵画「雨の中の調教」の作者 平野 幸一郎さん 幸区在住 67歳
競走馬の力、伝えたい
○…多摩川河川敷で調教される馬を病気療養中に描き続け8年。近隣住民などの勧めで、自分の絵が競馬場に展示されることになった。「絵を見てくれていた人。競馬場を紹介してくれた人。本当に不思議な縁が重なってこの様な機会を得られた。今年は午年だしね」と照れながらも笑顔で感謝の気持ちを表す。川崎競馬小向練習馬場で描いたスケッチ約8千枚から水彩画にした作品は50点ほど。飾られたのはその中から馬と調教師だけを描いたシンプルな作品。「競馬場での展示はモチーフとなった馬にとって一番の誉。作者としても大変光栄です」
〇…定年間近に大腸がんが発覚。約8時間に及ぶ手術は成功したが、歩くのが困難なほどまでに体力が低下した。「あれが人生を見つめなおす転機だった」と落ち込んだ時に出会ったのが、自宅近くの練習馬場の馬の姿だった。「競走馬の晴れの舞台はレースという一瞬だが、雨の日も埃が舞う日もほとんどの時間は練習場で努力している。そんな馬の力強さを描くことで心が和み、生きる勇気がわいてきた」と振り返る。
〇…1947年、栃木県茂木町で生まれた。中学生の時幸区に移り、学生時代にゴッホの絵に出合うと、「風景を描写する繊細なタッチに衝撃を受けた」。以来、趣味として絵を描き始め、社会人になっても油絵やテンペラ画など興味を持った手法にはとことん挑戦し、時間を見ては美術教室に通い絵を描き続けた。「アトリエは絵がちらかってね。整理しないと」と苦笑する。
〇…今年は夫人の実家がある鹿児島県指宿まで家族や親せきと長期間にわたって旅行した。「人間万事塞翁が馬。病気になったからこそ、当たり前に思っていた家族の存在にもより感謝できるようになった」。これからも助けてくれた競走馬の作品を描き続けるという。「目標は2、3年後に、地元で個展を開くこと」。馬に救われた人生に新たな夢が生まれた。
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11月22日
11月15日