川崎幸市場(川崎市地方卸売市場南部市場=幸区南幸町)は5月下旬から、同市場で出る廃棄野菜を活用して、神奈川県三浦海岸で採れたムラサキウニの養殖実験に挑戦している。
同市場では現在、月およそ800トンの野菜や果物を入荷している。そのうち約1トンは流通過程でやむを得ず廃棄されており、中にはキャベツの外葉など、まだ食べられるのに処分される食品(食品ロス)も含まれているという。廃棄野菜を少しでも有効活用できないかと着目したのがムラサキウニの養殖だった。
ムラサキウニは、地球温暖化による海水温の上昇で個体数が増加。三浦海岸では、ムラサキウニがワカメなどの海藻を食い荒らしてしまう「磯焼け」が発生し、漁業に悪影響を及ぼしている。ムラサキウニは食用にも向かず、周辺の漁業協同組合に駆除されていた。このウニを食用化しようと研究を重ねていた神奈川県水産技術センターが2017年、ムラサキウニの養殖技術を開発。規格外となり一部が廃棄されていた、地元野菜の三浦キャベツを餌として与えた通称「キャベツウニ」を生み出した。従来のウニと違い、身が詰まっていて甘みがあり、取り組みは国内外から注目を集めた。
同市場統括の鈴木庸平さんは、県水産技術センターの職員にムラサキウニの提供を依頼。譲り受けたウニで昨年、養殖に挑戦したが、天然の海水が身近に供給できない環境もあり、ウニは2日ほどで全滅してしまった。
その経験を踏まえ、今年は水槽の環境を細かく管理している。県水産技術センターの指導のもと、常時、水温は20度前後、塩分濃度は2・5%前後に保持。ウニの糞などにより水質が悪化しないよう、アンモニア濃度にも気を配っている。水温を一定に保つため、市場内の空き店舗の一角を使って、光の当たらない水槽の中で飼育中だ。鈴木さんは「現地の海水と同じ条件になるよう、毎日の気候に合わせて水槽に氷を入れたり、塩を入れたりして調節している」と話す。
養殖実験しているムラサキウニは当初50匹いたが、現在は40匹ほど。餌は、同市場で廃棄する予定だったキャベツの外葉500グラムほどを、週2回に分けて与えている。今の課題は、与えたエサの2、3割が残ってしまうこと。沈殿したキャベツはそのままにしていると水を悪くしてしまい、ウニに悪影響を及ぼす原因となる。鈴木さんは、「ウニが捕食するのは、大抵自分の針にかかった葉のみ。それ以外は水槽の下の方に落ちたまま腐ってしまう。餌の与え方に工夫が必要」と話す。
地元新名物誕生に期待
鈴木さんは養殖の実験について、「海水が供給できない閉鎖された環境でのムラサキウニの養殖は、方法が確立されておらず難易度が高い。水も天然のものではなく、あくまで人工海水なのでどこまでできるかは未知数」と話す。一方で、「養殖がうまくいけば、市場のキャベツを食べたウニとして販売したい」と期待を寄せる。ウニは7月下旬頃に成長しきり、実入りの状態などを確認後、商品化するか決めるという。
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