インターネット上のヘイトスピーチ(差別的投稿)にさらされ、心身をすり減らし続ける在日コリアン3世が横浜地裁川崎支部に損害賠償を求めている訴訟の報告集会が5月18日、カルッツかわさき(川崎区富士見)で開かれた。弁護団はヘイト投稿を行う男性の「祖国へ帰れ」を問題視。裁判所が差別認定するよう求めた。この日の口頭弁論で本人尋問に立った原告で市ふれあい館館長の崔江以子(チェカンイヂャ)さん(49)は「個人が司法や行政機関に助けを求めるだけではなく、ネット上の差別禁止法や包括的な差別禁止法といったルールに基づく国内人権機関によって裁判によらずとも救済される仕組みが必要」と訴えた。
崔さんは2016年、国会で川崎におけるヘイトスピーチの被害について参考人として発言して以降、ネット上で大量のヘイトスピーチのターゲットにされている。とりわけ「ハゲタカ鷲津政彦」というアカウント名の男性からブログとツイッター上で執拗に攻撃を受け「日本国に仇なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」と名指しで書き込まれた。崔さんは2021年11月18日、横浜地裁川崎支部に約300万円の損害賠償を求める訴訟を提訴した。
禁止法の後押しに
崔さんは「帰れ」という言葉について、「多くの在日コリアンに向けられてきた言葉。「反論することもできず、助けてもらうこともできず、仕方がないと諦め、言葉を奪われてきた」と主張。「在日コリアンがもうこんなことで、傷ついているから、しんどいから、生きていられないから、助けてください。差別されないよう守ってくださいと言わなくていいような結果を得るために自分のできることをした」と被害経験を伝えたことを述べた。この日の尋問に臨むことができたのは地域に住むハルモニ(おばあさん)の支えとふれあい館の子どもたちと交わした「差別を許さない仲間を増やす」との約束を守るためにと明かした。
神原元(はじめ)弁護士は「(在日コリアンに対しての)『帰れ』という言葉や脅迫状は、指紋押なつ拒否事件の時から連綿と続いている被害のキーワードだ」と指摘。「いくら何でもそろそろやめろという判決を出してほしい」と訴えた。また、ネット上で排外的な主張を繰り広げる「ネトウヨ」について「誹謗中傷や名誉棄損までは認めるが、人種差別までは認めない」と述べた。
師岡康子弁護士は「帰れ」発言が歴史的な差別性があると指摘。「在日コリアンは植民地支配された結果、やむをえない事情で住んでいる。祖国に帰りたくても帰れない背景がある」と説明した。また、「『帰れ』発言が差別禁止法に明確にあたるのだが、きちんと違法とされていない。そのために被害者が非常に大変な裁判を起こさないといけない。今回の裁判で『差別』と違法との判決が出れば、差別禁止法をつくる大きな後押しとなる」と展望した。
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