元日に発生した能登半島地震は発生から半年が過ぎた。復興が遅れているなか、震災で妻と長女を失った楠健二さん(56)は、川崎区砂子に居酒屋を開店し新たな一歩を踏み出した。店名は石川県輪島で妻と営んでいた店と同じ「わじまんま」。「生き残った家族のために」と決意を語る。
震災当日、お正月を店舗兼住宅で家族とくつろいでいた楠さん。2度目の大きな揺れで、後頭部に衝撃が走って意識を失った。気がつくと隣の7階建てのビルが倒れ、下敷きに。次男と次女は何とか引っ張り出したが、妻の由香利さん(48)と長女の珠蘭さん(19)は、がれきに挟まれ動かせず、救うことができなかった。
「目の前で家族を救えない。助けも来てくれない」―。大きな悲しみは癒えることはない。それでも、この春から横浜の看護学校で学び始めた次女や、幼少期の脳症で障害のある次男が安心できるように「普通の生活にもどしたい」と自身を奮い立たせた。
店を開いた川崎は、かつて家族といっしょに暮らし、川崎区大島は居酒屋も営んでいた場所。長男も暮らしている。「やっぱり父親が同じように働いていると、子どもたちも安心だろうと思う」。店は付き合いのある能登の鮮魚店に頼み、毎日新鮮な地魚を仕入れ、能登の地酒も揃えた。開店から客足は好調で石川出身者も多いという。復興が進めば輪島でもう一度店を開く気持ちもあるというが、「復興は今だに進んでいないのが現状。震災の被害が忘れられないように情報も発信していきたい」
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