川崎市内の定時制高校に通う生徒たちの学習成果を披露する作品展が、JR川崎駅前の地下街アゼリアで1月6日から17日まで開かれた。
作品展には、授業や部活動で制作した書や絵画など5つの部門で「優秀作品」に選ばれた約140点が展示された。
このうち書道部門で「最優秀賞」に選ばれた高津高校定時制1年生の小谷有香さん(多摩区在住)は、紙の真ん中に堂々とした行書で「道」と書き、両脇に「学ぶことは 生きること 今日だけ 仲間と共に」と、今の自分の思いをしたためた。
小谷さんは、バブル期の1980年代半ばに中学生時代を送り、「有り余るエネルギーを遊ぶことだけに使ってしまった」と振り返る。遊ぶことに夢中でほとんど学校に行かなかったため、進路指導の教員から「高校に進学なんて、できるわけない」と一蹴された。その言葉で進学を諦め、10代で結婚・出産。しかし結婚生活は長く続かず、離婚後は仕事と子育てに追われる人生だった。
だが人生の中で、若かりし日に学びから逃げたことを何度も後悔した。「知識の積み重ねがないまま大人として生きることは大変だった」と小谷さん。高卒認定試験に挑むも自力では無理と気付き、定時制を卒業した知人が立派に生きる姿に背中を押された。
昨春、進学。自分の過去をふまえ、「一日、一日を丁寧に生きよう」と心に決めた。「学ぶことで世の中のしくみが分かり、生きることが楽しくなった」と語る。
「分からないことだらけでキツい時期が続いたけれど、この場所(学校)は自分が求めるものすべてに、しっかりと応えてくれる。これからは自分にできることをして、人に喜ばれる存在になりたい」
なお、定時制の「作品展」は、市内の定時制に約5千人が通っていた1940年代前半に始まり、今回で53回目となる。現在は川崎、川崎総合科学、橘、高津の市立4校と県立川崎、県立向の岡工業の6校に計714人(昨年5月1日時点)が通っている。
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