10月17日告示、31日投開票に日程が変更となった川崎市長選挙。2期目・4年間の福田市政検証の後編は、主な政策を振り返る。
一定の成果も認知度低く
全国で初めてヘイトスピーチに刑事罰を科した「差別のない人権尊重のまちづくり条例」は、2019年12月、川崎市議会全会一致で可決・成立した。市が「差別は犯罪」との意思を示し、在日コリアンらへの「死ね」「ゴキブリ」といった直接的な差別言動は控えられるようになり、一定の成果をみせた。
繰り返されるヘイト街宣も収まることが期待されたが、レイシスト(差別主義者)たちは「表現の自由への侵害」を盾に対抗。ヘイト街宣は川崎駅前だけではなく、最近は武蔵小杉や武蔵溝ノ口、新百合ヶ丘の駅前へと全市に広がりをみせており、抑止効果としては不十分な面は否めない。
条例の周知不足も課題だ。市が5月に公表した人権に関する意識調査では、同条例について「知らない」「聞いたことはあるが、よく知らない」と回答した割合が約9割を占めた。在日コリアンらへの差別的言動を禁止することに焦点が当たりがちな同条例だが、LGBTQなどの性的少数者や障害者らへの差別解消も項目に盛り込む。今後の市民への啓発のあり方も問われる。
格差是正へ政策で訴え
福田市政は多様性のあるまちづくりを進めるため、「Colors,Future! いろいろって、未来。」を掲げ、多くの施策を行ってきた。東京五輪・パラリンピック大会に向けて取り組んだ「かわさきパラムーブメント」では、バリアフリー接客が可能な店舗であることを伝えるロゴステッカーを交付し、共生社会づくりを目指す意志を示した。パラムーブメントを一過性で終わらせてはならない。大会後も、全ての市民が負担なく暮らせるよう、様々な課題に取り組むことが多様性のあるまちづくりへとつながる。
20年には同性同士でも市営住宅へ家族として入居することなどを認める「川崎市パートナーシップ宣誓制度」を創設。先月28日時点の宣誓件数は53件に上る。性的少数者の生きづらさ解消の一歩となったが制度の適用範囲の拡大にむけた検討も求められる。
職場での女性活躍を進める中小企業を認証する「かわさき☆えるぼし」制度は18年度の創設から3年間で58企業を認証。一方、先導する立場の川崎市が掲げた目標「2022年4月1日までに課長級に占める女性比率30%以上」に対し、今年4月1日時点では24%にとどまる。ジェンダー格差是正は急務だ。
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大学教授らによるマニフェスト検証会で「様々な政策を実現させた」と評された福田市政。一方で、市職員の事務処理ミスや事故など不祥事も目立ち、再発防止策にも課題を残す。24年には市政100年の節目を迎える川崎市。次の4年間の市政のかじ取りを決める市長選を、市民一人ひとりが市政課題を考え、議論を深めるきっかけにしてもらいたい。
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