一般の人が自家用車で客を運ぶライドシェアを巡り、国土交通省は9月4日、タクシー事業者が運営主体となる「日本版ライドシェア」を全都道府県で導入する方針を打ち出した。これを受け、神奈川県全域で取り組みが本格化する中、自民党総裁選で浮上した「ライドシェア全面解禁」論に動揺が広がっている。
海外の「ライドシェア」では一般ドライバーが自家用車で客を運ぶ運用だが、「日本版」では安全性の問題を考慮し、タクシー事業者が「ライドシェア運転手」を雇用して研修を行うなどして安全性を担保する運用だ。政府は今年4月、車両が不足する地域で特定の時間帯に限り「日本版」を解禁。県内では川崎市を含む「京浜交通圏」で実施中だ。
一方、バス停や電車の駅までが遠く、タクシーを呼んでも時間がかかる「交通空白地」は依然として全国的な課題。市内でも「空白地」に近いエリアは現存する。国交省はこの「空白地」解消を目指し、「日本版」の運用を見直したうえで、年内にすべての都道府県での導入を目指す方針を打ち出した。県タクシー協会によると、方針を受けて県内全域で「日本版」の導入に向けた動きが進んでいるという。
導入に向け、タクシー会社の社長が実践するケースも多い。川崎タクシー(川崎区榎町)では国交省の方針に先立ち準備を進めてきた。7月には、関裕之社長自身が準備を整え「ライドシェア運転手」として市内で実車を体験。「特に『アプリ配車』の安全性を把握したい」と考えたという。関社長は「おおむね安全だと確認できた。乗客の方々から『タクシー会社の運営だから安心』との声も聞けた」と語る。
ライドシェアを巡り、財界や政界の一部がタクシー事業者以外への「全面解禁」を求めているが、「日本版」の運用による効果が認められたため「推進派」の動きは沈静化したかに見えた。だがここにきて、超党派の国会議員による「ライドシェア勉強会」の会長である小泉進次郎氏が自民党総裁選に出馬、「全面解禁」を公約に掲げる。
県タクシー協会の幹部は、「業界全体で『日本版』に取り組んでいる矢先なのに」と苦々しい表情を浮かべる。「全面解禁を求める企業は利益の薄い地方に関心がない。彼らの参入で中小企業であるタクシー会社がつぶれ、交通空白地はますます広がる。全面解禁を訴える推進派の方々は、問題の本質を理解していないのではないか」
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