「かながわ若者生き活き大賞(キララ賞)」を受賞した川崎市のホームレス支援団体「CoE」。毎週木曜日の夜、若者たちがリヤカーに炊飯器を積み込み、JR川崎駅界隈のホームレスにおむすびとみそ汁を届けてきたこの活動も10月で4年目に入った。代表の濱野怜さん(24)が活動のモットーに掲げる「明るく楽しく、かっこよく」が共感を呼び、支援の輪が広がっている。
9月のある木曜日の夜。川崎駅前の仲見世通商店街を、濱野さんと副代表の神領(しんりょう)龍生(たつき)さん(22)がリヤカーを引きながら、目的地に向かって歩き始めた。炊き立てのごはんが入った炊飯器二つと熱湯入りのポットなどを詰め込んだリヤカーは重さで車輪がギシギシと鳴り、道行く人の目を引く。濱野さんは「ここにいる人にも、ホームレスの存在を知って欲しいので」。あえて繁華街を通る理由だ。
一つ目の配布場所、市教育文化会館前に到着すると、数人のホームレスが待っていた。「よお!」と元気に近寄るのは真栄城(まえしろ)保さん(61)だ。ホームレスだったがCoEの支援で「脱路上」生活に転じ、今は生活保護を受給して暮らす。恩義を感じ、手伝いに加わった。
神領さんがおむすびを握り、濱野さんは人数を数えながらホームレスの人々に声掛けをする。真栄城さんは配る係。この日はさいたま市在住で立教大学の大学院生の一澤直希さん(24)も初めて加わった。ニュースで「CoE」の活動を知り、研究も兼ねてやってきたという。
食事を配り終えると、次の場所へ移動する前に、濱野さんも神領さんも全員に「グータッチ」を交わして回る。まるで友人同士のようだ。
「助ける」より信頼
濱野さんが大事にすることの一つに「信頼関係」がある。2021年10月に活動を始めた当初は「助ける」意識が強かったが、様々な事情で路上生活を送る人たちを無理やり「脱路上」させる手法は「押しつけ」だと思い到った。そのため当事者が困りごとなどを相談しやすい関係をつくるため、コミュニケーションを切り替えた。
夜回り二カ所目の配布場所、稲毛公園に着くと、すでに15人ほどが待っていた。50年近く路上生活を続ける男性(73)は「りっちゃん」の名で呼ばれる常連だ。
「温かいご飯とみそ汁をもらえるなんて、ありがたいよね」と男性。CoEの活動初期からこの界隈にいるといい、「最初は2人だったよ」。口コミが広がり、別の場所からも集まるようになったという。ホームレスかどうかが微妙な人も散見されるが、「生活に困る空腹な人には食べてもらう」と濱野さん。神領さんも「線引きは難しい。困っているなら支えたい」と語る。空腹で「おむすびが小さい」とこぼした人もいたが、濱野さんは「それで来なくなることの方が嫌なので。コメを多く炊いて、大きくした」と笑う。
この活動を続ける上で、濱野さんは「明るく、楽しく、かっこよく」をモットーにすえた。試行錯誤も続いたが、最近では農家からコメが届いたり、配布場所の一つである川崎駅前のバス停で「頑張って」と現金を渡してくれる人もいる。友人たちも食材を寄付してくれたりする。
支援の輪が広がることに、濱野さんは手ごたえを感じている。「支援って特別なことじゃないってことが、色々な人に響いていると思う」
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