年頭にあたり、本紙では黒岩祐治知事に単独インタビューを行った。黒岩知事は人生100歳時代に向けた取り組みや女性の活躍などについて意欲的に語った。(聞き手・露木敏博)
―まずは昨年を振り返っての感想をお願いします
「知事2期目最後の年に当たり、これまでやって来たことを着実に前へ進められた年でもありました。“未病”というコンセプトも大きな広がりを見せ、その拠点となる未病バレー『ビオトピア』は、年間集客目標20万人のところ、8カ月で40万人を超え、スタートから大人気となりました。未病コンセプトを専門的に教えていくヘルスイノベーションスクールも今年4月にオープンすることが決まり、本格的に教えていく教育機関も整いつつあります。一方で、最も苦労したことは県立がんセンターの重粒子線治療が止まってしまうのではないかという危機に直面したことです。いのちをつなげるため、ひたむきな思いを持つ患者さんのためにもこの治療がストップするのを回避させなければならないと、全庁を挙げて取り組みました。その結果、問題が発生する以前より医師の数を確保でき、安定的な運営を行うまで回復させることができました」
―未病の指標化についてはいかがでしたか
「未病は健康な状態を白、病気を赤と色分けするのではなく、白から赤へのグラデーションという捉え方で指標化することが大事と考えます。2017年の秋に実施されたME―BYOサミットの中でも、この未病の指標化は大きなテーマとなりました。その後、ジュネーブにあるWHO本部へ神奈川県チームが出向き、参加20カ国との間で未病の指標化のイメージが共有出来たことは大きな成果だったと考えます」
―人生100歳時代に向けた取り組みについてお聞かせください
「県が人生100歳時代に向けた設計図づくりに着手したのは2016年の初めのことです。当初は県庁内でも、まだ早いのではないかとの意見もありましたが『食』『運動』『社会参加』の重要性を繰り返し提唱し、具体的な設計図づくりを推し進めてきました。60歳までは現役で、その後引退して40年間も老後生活を送るというのはたいへんなことで、いつからでも新しいことを始められるという発想のもと、シニア世代の学びの場やシニアベンチャーを目指す方々の拠点を整備しました。また、神奈川県の場合、女性が出産や子育てを機に退職するケースが多いのが現実です。そこで、女性に活躍してもらうためには企業トップの意識改革が必要と考え、3年前に県にゆかりの深い大企業のトップに声掛けをして女性の活躍応援団を結成し、女性活躍の社会的ムーブメントの拡大に取り組んでいます。また、中小企業のトップも応援団のサポーターとして参加していただき、それぞれ目標を掲げてもらったうえで動きを活発化させてもらっています。最終的には『女性の活躍応援団』という言葉自体が陳腐になるような時代を早急につくっていければと考えます」
笑いがあふれる社会に
―ともに生きる社会かながわ実現への取り組みは
「2016年に発生した津久井やまゆり園の事件は決して忘れられない衝撃的な事件でした。我々はその悲しみをてこにし、県議会とも共同して『ともに生きる社会かながわ憲章』を取りまとめ、その理念を広く深く浸透させていくためのイベント『みんなあつまれ』では障害者の皆さんの作品を販売したり、アートの素晴らしさを知ってもらったり、一緒にパフォーマンスを披露したりで、まさに『ともに生きる社会』を体感するための場を作ってきました。一方、全国的に問題となりました障害者雇用率の改善に向け、これまで身体障害者の皆さんに限っていた採用試験を知的障害者の皆さんや精神障害者の皆さんにまで門戸を広げ、県自らがともに働く職場環境づくりを率先して推し進めているところです」
―本年、ラグビーW杯そして来年には東京オリ・パラが開催されますが
「まさにカウントダウンが始まりました。ラグビーW杯は決勝戦と準決勝2試合、日本戦を含む全7試合が県内で開催されます。開催に向けて宿泊施設の整備が進む中、これを大きなチャンスと捉え、多彩な観光資源の発掘・磨き上げや魅力的なモデルルートづくりを着々と進めております。オリンピックセーリング競技の会場となります江の島では昨年、その前哨戦の位置づけともいえるW杯が開かれ、様々な問題点も浮き彫りになりました。漁業関係者との調整も丁寧に進めていかなければなりません。また、予想される道路渋滞につきましては、大磯プリンスホテルから会場までをつなぐ国道134号線の4車線化工事はすでに終了しています。なお、会場から東側の対策については、引き続き鎌倉市や藤沢市とも協議を重ねてまいります」
―最後に県民へのメッセージをお願いします
「今年も県民の皆さんと一緒に“笑い”があふれる社会を構築していきたいと思います。超高齢社会、人生100歳時代を“笑いがあふれる社会”にできるよう、明るい気持ちで立ち向かっていきたいですね」
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