小田急多摩線の延伸について、市はこのほど関係地方公共団体や有識者らで構成する「小田急多摩線延伸に関する関係者会議」の検討結果を発表し、相模原駅まで先行整備する案で検討していくことを明らかにした。現在の唐木田駅(東京都多摩市)から上溝までの計画よりも、相模原まで先行整備する方が、早期の黒字化が見込めるとの結果が出されたためだ。市は、延伸決定には今後もより詳細な調査が必要だとし、さらなる調査検討のため関係団体へ参画を呼びかけていく方針だ。
小田急多摩線の延伸計画をめぐっては、相模原市と町田市が、都心部へのアクセス向上や地域の活性化を促すため、唐木田から町田市、相模原、上溝、田名、さらには愛川・厚木方面への延伸を求めてきた。2014年には相模総合補給廠の一部返還が実現し、延伸による新駅の整備が具体化。16年4月の国土交通省の交通政策審議会では、延伸計画が両市と都心部をつなげる「意義のあるプロジェクト」の一つに位置付けられた。一方で、収支採算性に課題が残ることも指摘されたことから、同年8月に関係自治体や国交省、小田急電鉄などで関係者会議を設置し、調査研究を進めてきた。
延伸する際の運営方式は、施設の整備主体と運営する営業主体を分ける上下分離方式の採用を想定。整備費は3分の1を国、3分の1を地方公共団体が負担し、残り3分の1を借入金でまかなう。借入金は開業後に営業主体から支払われる施設利用料で返済していく仕組みだ。
会議では、2033年の開業を想定した上で、唐木田から上溝までの全線一括整備と、第1期整備区間(唐木田から相模原)、第2期整備区間(相模原から上溝)に分けた段階的整備について試算。その結果、全線一括整備では、概算建設費が1300億円、1日の輸送人員が7万3300人で、開業から黒字化できるまでの期間の目安とされる30年を超過し、42年を要する結果となった。同じく全線一括整備した場合、相模原の新駅とJR相模原駅を結ぶ連絡通路の距離を短縮したケースでは、概算建設費は変わらず、1日の輸送人員が7万4900人になるが、黒字化には40年を要する結果に。それに対して、段階的整備では第1期整備区間の概算建設費は870億円。1日の輸送人員は5万3300人と減少するが、26年で黒字化できる見込みとなった。この結果を受け、市は段階的整備を採用し、早期の延伸実現につなげていく構想だ。
実現にはさらなる調査を
検討結果を発表後、本村賢太郎市長は市議会で「JR上溝駅までの全線整備および、さらなる延伸を早期に実現するため、相模原駅までの先行整備を軸に関係者との協議を進めていきたい」と話した。ただ、市は延伸の決定にはさらなる調査研究が必要だとし、第1期整備区間の地盤や地質の調査、適切な運行本数や輸送人員などの具体化に加え、第2期整備区間についても検討を進めていく考えで、関係諸団体に調査への参画を依頼していく構えだ。
これまで上溝、田名地区への延伸の実現を訴えてきた小田急多摩線延伸促進協議会の成川猛会長は今回の結果を受け、「残念な結果。利便性や相模原の発展を考えると、借金をしてでも上溝や田名地域にまで延伸する価値はあると考える。会としては相模原の先までめざして引き続き働きかけたい。また、今後の活動については、会員や行政とともに考えていくつもりだ」と話した。
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