昨年4月に着任し、地域の実情に目を凝らす一方、令和元年東日本台風による甚大な被害が発生するなど防災、災害対策の面で難しいかじ取りを迫られた藤田雅之区長。今年は区制施行10周年の中、新型コロナウイルス感染拡大が区政運営に打撃を与えている。そこでインタビューを通じ、こうした現状を踏まえた上で今年度の区政の運営について話を聞いた。
藤田区長は着任当時、地域の様々な会合で、熱意を持って地域事業に取り組む住民の方々の姿に非常に感銘を受けたという。自身も相模台公民館や市民協働推進課での職務を通じて市民とのかかわりを深めてきたが、区長の職責を担う中、改めて「多くの区民によって区は支えられている」と実感した。
昨年一年間で印象に残った出来事については、甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風の災害を一番に挙げる。中央区でも過去に例のない規模で、多くの区民が避難を余儀なくされた。中央区だけでも田名地区を中心に約2000人が小中学校の体育館、公民館に避難。そうした中、上溝地区、小山地区などでは地域の人たちが炊き出しや食料の提供に乗り出すなど、不自由な避難所での生活に対する支援が、避難住民にとって大きな支えとなったことに感謝を示した。
もう一つには、中央区の今後8年間のまちづくりの指針として本年4月からスタートした、区基本計画の策定を挙げる。策定にあたっては区民会議のメンバーをはじめ、市内の高校生16人による意見交換会での議論などを踏まえながら検討した。「多様性の大切さ」をキーワードに具体的な事業につなげる考えだ。
現状と取り組むべき課題
新型コロナが市民生活に未曽有の影響をおよぼす中、公民館など市施設は閉鎖され、地域の会合も開けない状態が続き、地域活動に影を落としている。
商店街へのヒアリングも行ったが、様々な支援の情報がうまく届いていないとの声もあり、改めて、情報を整理した上で提供した。
敬老会、ふるさとまつりなどの様々なイベントの開催を危ぶむ声も上がっているが、早期の収束を願いつつ、住民との地域活動の再開を見据えて取り組みを進める。
中央区では、相模総合補給廠の一部返還地の整備、住民参加で検討が進められている淵野辺駅南口周辺のまちづくり、小田急多摩線の延伸などの大きな事業が動いている。区役所としては、区民の安全・安心な生活を守るための取り組みを更に進めるつもりだ。交通事故全体に占める割合が多い自転車と高齢者の事故防止への取り組み、振り込め詐欺の撲滅を図る防犯対策に力を入れる。とりわけ振り込め詐欺については、2018年の被害総額約1億円から19年は約7000万円に減ったものの、一層の撲滅に向け相模原警察署とも連携し、啓発を強めていく構えだ。
新規事業も、課題は防災
区制10周年事業などは新型コロナで滞っている状況だが、区への転入者向けに区の魅力をイラストで盛り込んださくら色のクリアファイルを配布しているほか、在宅時間が増えるのを受け、「中央区四季の空中散歩」と題し区内上空からドローンで撮影した動画を配信するなどの取り組みに加え、インスタグラムで家での過ごし方を紹介し合う「中央区おうちですごそうプロジェクト」を展開。投稿を募集中だ。
こうした新規事業を挙げつつも、難題は避難を主体とした防災対策。令和元年東日本台風では田名小学校に約400人が身を寄せた。職員の配置を含め様々な課題が見えてくる中で、住民の協力の必要性も痛感した。新型コロナの状況に応じた密接を避けた避難方法の確立、車両での避難の可否を含め、検討課題が山積。相模川では緊急放流も実施されたことから、あらゆる状況を想定した避難所の受け入れ体制の整備に努めていく。
2年目の決意
情報発信の活発化にも意欲を見せる。区内の住民、自然、企業、JAXAをはじめとする研究機関、大学などの豊富な魅力を発信し、「中央区に住んでみたい、住み続けたい」と思ってもらえるようなまちづくりにつなげていく。コロナ禍の状況下、イベントなどについては具体的な明言を避けたが、大学等と積極的に連携していく方針。区民の意見を組み入れながら、区政運営を進めていくことを強調する藤田区長。「このような状況でも自治会など地域の方々が頑張っている。区も、コロナに負けずに、地域のためにできることをしっかり頑張りたい」
区制10周年を皆で祝えるときが来るのを信じて、区民と共に、この苦難を乗り越える決意だ。
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