新社屋ビルを建設し、8月に新装オープンした事務用品・IT関連機器販売「文盛堂」(千代田)の店舗内にこのほど、女子美術大学(南区麻溝台)の学生が森の木をイメージしてデザインした作品『文具のなる木』が登場した。10月2日に関係者が集い、店舗内で作品の完成披露式が行われた。
新ビル建設にあたり文盛堂では、店舗中央部に設置される支柱の活用方法について昨夏から検討を始めた。蜂の姿をした同社のマスコットキャラクター「ぶんちゃん」のかわいらしいイメージと、温かみをかけ合わせた新店舗のコンセプトは「ぶんちゃんの森」。そこでスタッフから、「柱を樹木に見立てては」というアイデアが出され、尾作太一専務がそれに『文具のなる木』と名付けた。創作にあたっては、「地域の人に手がけてもらいたい」という尾作専務の思いから、就業力促進を目的に学内外から受注した案件を学生に業務委託する女子美術大学の「デザインルーム」に依頼することにした。
このプロジェクトではコンペ形式で4人の学生が3つずつデザインを提案。尾作専務らは、デザインルームプロデューサーの斉藤いづみ教諭と昨秋から打ち合わせを重ね、最終的にデザイン科プロダクトデザイン専攻3年の堀ヒカルさんの案を採用した。「どの案も良くて、選ぶのが大変だった。その中でも堀さんのデザインがイメージに合った」と尾作専務は振り返る。
ビルの工事が進む中、コロナ禍による大学活動の停止が作品の制作にも影響を及ぼした。10月の完成披露に間に合わせるため、大学の教授や友人たちがこぞって作業に協力。最後の数日間でなんとか完成にこぎつけた。
「グリム童話に出てきそうな森をイメージした。ポップなものが好きなので、木材のモニュメントだけど、カラフルにしようと思った」と堀さん。高さ約3m、外周約4mの存在感のある太い幹、天井から垂れ下がる140本の葉に見立てた色鉛筆は着脱ができ、四季折々にさまざまな色合いを見せる。作品のどこかに4匹の「隠れぶんちゃん」が、樹洞(うろ)には森の動物が潜み、枝には本物の文具が実る。幹と枝には杉など3種の木材を用い、色鉛筆には樹脂系の建材を使った。堀さんは「子どもがわくわくするようなデザインにしたかった。見て、ふれて、楽しんでいただきたい」と作品への思いを語った。尾作専務は「ゼロからこれだけの作品にしていただき感謝しかない」と目を見張り、「相模原には『文具のなる木』があるんだと思っていただけるくらい、地域に愛されるものに成長させていきたい」と述べた。
今後も根を張り貢献
2日に行われた完成披露式には文盛堂の尾作晃社長、尾作専務をはじめ、堀さん、斉藤教諭、ビルを施工した朝日建設の中川秀樹社長ら関係者約20人が出席。尾作社長が「弊社は9月に創業63周年を迎えた。以前からお世話になっている方々はもちろん、今回新しい出会いができたことにも感謝したい。今後もこの地に根を張り、地域経済に貢献できるものと思っている。皆様の益々のご支援をお願い申し上げる」とあいさつした後、関係者から祝辞が述べられ、堀さんと中川社長に対しては、尾作社長から感謝状が贈られた。