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「声」で役へ命吹き込む 市内出身 声優・畠中祐(たすく)さん

文化

公開:2021年1月28日

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 アニメや映画などの登場人物に、声で命を吹き込む「声優」。現在放送中のテレビアニメ「SK∞ エスケーエイト」をはじめ、声優として多数の作品に出演。感情的でまっすぐに向かってくるような声で、観る人を魅了する。昨年11月には特撮ドラマ「ウルトラマンZ」のエンディングテーマにもなった、「Promise for the future」をリリースし、音楽の世界でも存在感を見せるなど、幅広い活動を行っている。

初仕事は小学生

 生まれた時から両親は舞台の上。物心ついた時から芝居の世界への道を予感していた。舞台に立つ両親の姿に、幼心にも胸が熱くなった。自然の流れで、自身もやがて表現する仕事に憧れるように。きっかけは小学5年生。映画「ナルニア国物語」の吹き替えを行う声優を選出する、一般公募のオーディションがたまたま目に留まった。舞台の上に立つ「俳優」という仕事にも憧れていたが、「当時はちょっと太っていたんです。それで、見た目に縛られず自由に役を演じられる、声優という仕事に興味を引かれました」と笑う。

 初めてのオーディションは、自分で携帯の録音機能を使い、四苦八苦しながら音声をとって応募。自信は全くなかったが、見事合格を勝ち取り、主人公の一人であるエドマンド・ペベンシー役に選ばれた。「信じられない気持ちだった。ちょっとやってみよう、という気持ちだったのに、まさかこんな風に第一歩を踏み出すとは思わなかった」

 それでも、初仕事はなかなかうまくいかなかった。通常、プロの声優なら1日で終わる収録が、満足がいく演技ができずに1週間程度かかることもあった。初めて直面した「芝居」の難しさに、自分の声まで嫌になり、帰り道を泣きながら歩いたことを今でも昨日のように思い出す。

16歳で単独主演に

 デビュー後は学業と両立しながら吹き替えの仕事をこなす中、16歳でテレビアニメ「遊☆戯☆王ZEXAL」の主役に抜擢。これまでとは違う、主役の重みに押しつぶされそうになった。現場では「声の出し方」や「立ち振る舞い」まで、今につながる技術を叩きこまれた。今まで知らなかったことや、意識していなかった部分まで身に染みた忘れられない仕事のひとつ。この厳しい現場は声優を職業として意識するきっかけとなり、進路に悩み揺れ動いていた自身の背中を後押しした。

 「芝居を原点から学びたい」と桜美林大学芸術文化学群に進学。視野を広げ人間力を磨くため他学群の授業を受け、余暇は芸術鑑賞に費やすなど経験すべてを「仕事につなげたい」と意欲に燃える学生時代を過ごした。

辞められない「好き」な職業

 「声優という仕事の魅力は年齢や見た目に左右されないところ。舞台や場所にも縛られず、自由度が高いところがとても好き」。そう語るものの、今でも時々「向いていないな」と落ち込むこともある。役に没入すればするほど感情が揺さぶられ、ひどく疲労する日も。それでもそのような苦労を含めても、アフレコが終わると全身が「楽しい」で満たされる。「求めてもらうと、どうしようもなくうれしい。落ち込むことはあっても、結局やめられない」と笑う。

 「声優」という職業はアニメーション産業の拡大により、声で演じるだけにとどまらず、歌やダンス、トークの技術まで広く求められるようになった。それらに応える原動力は、「自分のパフォーマンスで楽しんでくれる人がいれば」という思い。ただ、活動の芯として、「芝居」に対する意欲は特別高く持ち続けている。

経験が演技へつながる

 鶴の台小、新町中、相模大野高校出身。「相模原は大好きな地元」というように、今でも休日にはふらりと思い出の相模大野中央公園やプラザシティ公園に訪れたりする。自然が好きで、木登りや草野球などで友人と日が暮れるまで遊んだ日々を思い出す。「相模原の公園は特に好き。高校生まで公園で遊んでました」と笑顔を見せる。

 地域活動にも積極的で、学生時代にはゴミ拾いのボランティアや、ツリーハウスを作るイベントに母親と参加したことも。放課後には地域のドッジボールや空手のクラブで汗を流し、休日に友人とお祭りではしゃいだり、時には太鼓を叩いて盛り上げたりもした。

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、そうした外で遊ぶ機会や地域のイベントで楽しむことを奪われた子どもたちの心に寄り添う。「子どもの頃の経験は今でも強く心に残っていて、演技に生かされている。今は難しいと思うが、相模原の子どもたちにも外に出ていろんなことを感じてほしい」

 めざすのは「『この役はこの人にしかできない』といわれる役者」。これまで積んできた経験をもとに、これからも役に命を吹き込み輝かせる。
 

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