相模川左岸の堤防、南区新戸から下磯部までの約1400mに敷き詰められた芝桜、通称「芝ざくらライン」。その長さは日本一とも言われ、毎年多くの来場者を楽しませているが、管理する団体が解散および解散の意思を示しており、存続の危機を迎えている。
日本一を誇る芝ざくらラインは、約600mを「相模川芝ざくら下磯部愛好会」(吉山茂利会長)が、約800mを「新戸相模川芝ざくら保存会」(児玉高典会長)が管理している。
そのうち「相模川芝ざくら下磯部愛好会」が、3月31日付で解散を発表した。同会は2004年、自治会や老人会らが連携して結成。地元企業から資器材の提供を受け、17年にわたり会員が植栽を行ってきた。
解散の理由の一つに吉山会長が挙げるのが会員の減少と高齢化。吉山会長によれば同会の平均年齢は80歳前後。芝桜の管理のため、年に10回ほどの除草作業を行っているが、堤防が斜面であるため高齢者にとっては作業もしづらく、「このままでは事故も起きかねない。その前に幕を引こうと考えた」と話す。
「新戸相模川芝ざくら保存会」も解散の意思を表明している。同会は2002年、老人クラブ寿会の会員が発起し、伊勢原市から苗を譲り受け育てたことに始まる。同年に「新戸芝ざくら愛好会」を結成。市を通じて県の河川専用許可を取り、堤防法面に芝桜の植栽を行った。そこから敷地を拡大し、現在の長さに及んでいる。愛好会は後に保存会へと名前を変えながら、19年にわたり活動を続けてきた。
新戸の芝ざくら保存会も状況は下磯部と同様。現在も20人ほどの会員が活動を続けているが、その多くが70代〜80代だ。
存続は困難に
会員の減少と高齢化による後継者不足が、大きな影を落としている。
また、災害対策も理由の一つとなっている。現在、両会とも雑草を防ぐため、堤防に黒色の「防草シート」を敷いているが、相模川を管理する厚木土木事務所から堤防の安全点検を目視で行えるよう、毎年5分の1の範囲ずつシートを剝がすことを求められている。近年、大雨により堤防が決壊する事例もあり、県としても堤防の安全確認のため必要な措置だという。
保存会の児玉会長は「もし指示どおりに行うとすれば、年間で200万円くらいの予算がかかる」と話す。会の活動にあたっては、市から約266万円が除草委託作業費として支払われているが、作業等に必要な金額のため、他に回す余裕はない。また新型コロナウイルス感染症により、苗の販売などで運営費を得る機会だった「芝ざくらまつり」が2年続けて中止に。資金難に追い打ちをかけている。
「災害対策が重要なのは十分理解しているし応えたいが、今の保存会で行うのは難しい」と児玉会長。今後はクラウドファンディングなども視野に、予算捻出を模索していく。「芝ざくらは貴重な観光資源。存続を望む声もいただき、残したいと考えているが、5月の総会までに算段が付かなければ保存会も解散せざるを得ない」と児玉会長は話している。