昨年12月、市内にオープンしたコッペパン専門店「横浜コッペ」(南区松が枝町23の5)が、従来とは異なる形での「障害者就労支援」に注力している。
同社は障害者雇用の現実として、身体障害者に比べて、知的・精神障害者の雇用機会が少ないことに注目。厚労省が3月、一定の基準を持つ企業に対して障害者の法定雇用率を2・3%まで引き上げたが「知的・精神障害者の雇用率は身体障害者に比べて低い。雇用されても法定雇用率を守るためだけに生産性がない作業を任されている場合も少なくない」と同社の佐藤善彦代表は話す。
「障害者の皆さんにとって、やりがいのある仕事を継続して作りたかった。そのためには補助金に頼らず利益を出すシステムが必要」と佐藤代表。そこで同社は現在、企業が雇用した知的・精神障害者に有益な仕事を提供し、さらに利益も生み出す事で、行政からの補助金を頼らずに安定した運営を図る「全国でも珍しい」システムに取り組んでいる。
ロスパンに販路
店舗でのパンの製造・販売に加えて同社では、通信販売などを行う「フードエコスタイル」が運営するロスパン専用サイト「エコスタパン」に製品を出品。自店のパンや同業店で売れ残ったパンを仕入れ、冷凍し、詰め合わせて通販で販売する事業を行っている。
同社はそこで、障害のある従業員には使用材料表示のシール貼りや袋詰めなどを業務として提供。「単純だが量をこなす必要がある作業は知的・精神障害者に向いている」(佐藤代表)と言い、1日で200個ほど作り上げる。廃棄する予定だったパンに販路を見出し、障害者雇用と同時に食品ロス削減にも大きな役目を果たしている。
雇用主である企業には障害のある就労者の給料、保険関係費、交通費などを負担してもらい、同社は生産性がある仕事を提供するというこのシステム。佐藤代表は「都市部に本社がある企業に提案したい」と話す。
全国展開も視野
同社は東京都・千葉県は「とうきょうコッペ」、埼玉県は「ところコッペ」、愛知県は「名古屋コッペ」、大阪府は「おおさかコッペ」の展開を予定。佐藤代表は「一緒に障害者の方が生き生きと働ける社会の手伝いをしませんか」と呼び掛けている。