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五輪 本当の「遺産」にするために デスク・レポート

社会

公開:2021年9月30日

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 ▼五輪、パラリンピックが相模原市に残したものとは何か。2017年、市は五輪ロードレース競技の誘致活動に乗り出し、ブラジルオリンピック委員会、日本オリンピック委員会との間で事前キャンプ地の実施にかかわる覚書を締結し、ホストタウンに登録された。ロードレースの開催をめぐっては、八王子、立川などと共に誘致活動を展開。ところが、選ばれたのは相模原だけだった。たまたま相模原がコース上に位置していたからだという。翌年にはカナダのホストタウンにも登録された。

 ▼ブラジル、カナダとの交流は進んだ。市内中高生による水泳を通じた派遣交流、ブラジルのテストキャンプでは児童と選手とが互いの文化に違いを感じつつも、歌や遊びで楽しんだ。本来ならこれまで温めてきた親交を五輪でさらに醸成させるはずが、コロナによって狂ってしまったが、リモートでの交流、お囃子でカナダ選手を送り出した「壮行式」、児童らによる手づくりの応援旗の寄贈など市民それぞれができる範囲で選手に寄り添った。そうしたもてなしの気持ちは、事前キャンプ地として五輪が身近に来なければ生まれなかったものだ。

 ▼パラスポーツの普及もそうだ。共生社会の実現をめざしている市にとって、パラ競技を通じて障害への理解を深めることは必要なことだ。車いすバスケットボールの出前授業やボッチャの体験会などが小学校を中心に増えていったのは、五輪の機運がもたらした成果でもある。ただ、こうした交流の蓄積を一過性のもので終わらせてはいけない。

 ▼市の担当者は競技の開催にあたって関係機関が一丸で取り組んだこと、会場となったことで相模原がロードレースを中継した世界のメディアから発信されたこと、ホストタウンの役目を果たしたことなどを挙げ、「五輪は市にとって大きなプラスになった」と強調する。このプラスを本当の「遺産」にするためにも後世に継承し、今の子どもたちが市を担う主役となったときのために残さなければならない。両国との交流の継続はもとより、競技会場となった点を上手に活用したシティセールス、もちろん観光振興なども可能性に富む。大事なのはこれから。五輪が残したさまざまな「遺産」が未来へとつなっていけば、やがて市民の誇りとなる。そうなったとき、市はさらなる発展を遂げるはずだ。

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