小さな藻の仲間である「クロレラ」が、体の中に入った「カビ毒」を外に出してくれる――。麻布大学獣医学部の福山朋季准教授と株式会社ユーグレナ社(東京都港区)がこのほど、こんな共同研究の結果を明らかにした。今後、クロレラを活用した飼料の開発や健康食品としてのさらなる活用につながることが期待される。
「カビ毒」とは、穀物に発生したカビが生み出す毒のことで、人や家畜の体に入ると健康に悪影響を及ぼす。検出方法の研究は進んでおり、特に発がん性がある・死に至るなど重大な毒性を持つものについては、農林水産省によって基準が定められ、対策措置が取られている。一方、「蓄積されることで何らかの悪影響がある」とされている種類については、これまであまり研究されてこなかった。
ユーグレナ社では、微細藻類(ミドリムシなどの小さな藻類)の研究・開発や培養・生産、それを活用した食品や化粧品の開発などの事業を行っている。微細藻類の一種であるクロレラは、生体に悪影響を与える重金属に対して吸収抑制作用があることが分かっていた。そこで同社はクロレラのさらなる機能性として「カビ毒」の問題に着目した。一方の福山准教授は、薬理学と毒性学を専門とし、食べ物や細菌、薬などあらゆる物質の良い面(薬性)と悪い面(毒性)を研究している。今回の共同研究は、福山准教授にユーグレナ社が働きかけたことで実現。同社グループの生産する「ヤエヤマクロレラ」が生体内のカビ毒に吸着し、その排出を促すことを発見した。
クロレラはすでに健康食品として海外や日本でも摂取されているが、「今後、家畜の飼料に混ぜるなどの活用も期待できる」という。同社ヒト科学研究所の中島綾香所長は「人が健康にいきいきと年を重ねられるように、これからもクロレラなどの微細藻類の研究に取り組んでいく」と意気込む。福山准教授は「クロレラが全てのカビ毒に吸着するわけではないので、引き続き研究を続ける必要がある」とし、「人々の食の安全に貢献できる研究を続けていきたい」と話した。
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