移動が不自由な人をエレベーターがない建物でも車椅子ロボットが上層階へ移動――。世界初のロボットの市販化を実現させようと、市内の企業が2月29日、相生の市営住宅東団地で実証実験を行なった。1年以内の市販化をめざすという。
この車椅子ロボット「movBot ACE―Stair(以下、ムーボット)」を開発したのは、田名のアクセスエンジニアリング株式会社。エレベーターにかわって各階へ昇降移動ができる車椅子ロボットの開発は世界初。国際特許を出願しているという。
リチウム電池を動力源とした電動で、前輪・後輪とも三角形に配置されたタイヤが回転しながら階段を乗り上げていく。幅80センチ弱で座面の最大高さは135センチ。狭い場所でも自由に動くことができるように、複数のタイヤの回転方向を調整することで直進・後退のほか、横行や斜行、旋回などが可能。利用者は椅子に座った姿勢のまま、階段を昇り降りすることができる。利用者が専用カードをかざすと目的階に移動し、目的階で降車すると自動で基地に戻る仕組みを導入するという。
コスト10分の1に
全国にはエレベーターのない中層階の公営住宅が数多くある。国や自治体は住民の高齢化に伴ってエレベーターの設置をめざしているが、巨額なコストがかかるため、十分な整備が進んでいないのが現状だ。ムーボットの導入が実現すれば、エレベーター設置費用の10分の1に抑えることができるという。
この日の実証実験は市の支援事業の一環として、相模原市と株式会社さがみはら産業創造センター、同社の3者によって実施。3者の関係者や同団地の住民ら約90人が参加した。
実証実験では団地内の階段を活用して開発スタッフらがムーボットを操作して昇降させた。別室では中村光寿社長が機能や性能を解説し、住民らがモニター越しにその様子を見学した。
参加者からは「団地には必要。市販化に期待している」「前向きで降りるのは怖そう」「障害物がある場合はどうなるのか」「どのように運用していくのか」など様々な質問や意見が上がった。
中村社長は「皆様からの色々な意見が開発に役立つ。1年以内の市販化をめざしているが、資材や人材の確保などの課題がある」と話した。今後、障害物への対応について青山学院大学と共同で研究を進めるという。
開発を手掛けた中村賢一取締役会長は「階段を昇降できるロボットの販売を目指している会社は世界でも皆無。怖さを感じるという意見もあるが、見慣れてくれば解消できると思う。世界初ということもあり、最初の一歩を踏み出すことが大切」と話している。
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