「SUPER OPEN STUDIO」の10周年記念書籍の編者を務めた 中尾 拓哉さん 中央区在住 42歳
芸術を「言葉」で伝える
○…完成した書を手に「スーパーオープンスタジオ(S.O.S.)の10年にわたるプロジェクトが一冊の本になってうれしい」と笑顔を見せる。S.O.S.では開催年ごとに個性あふれる記録集「S.O.S.BOOK」を発行してきた。自身も2017年から4年間、アートラボはしもとの美術専門員として、21年からはフリーランスとして企画・編集を担当。今回、それらを一つにまとめる編者を任された。「形が違うものを一つのフォーマットに落とし込むのはかなり大変だった」と振り返るも、どこか清々しい。「S.O.S.の活動は面白い。生活しながら活動するアーティストのことをもっと知ってほしい」と熱い思いがあふれる。「まとめることで見えてくることもある。資料や記録としてだけでなく『読み物』として楽しんでほしい」
○…千葉で高校までを過ごし、「美術を言葉にすることを学びたい」と多摩美術大学へ入学。幼い頃から興味があった美術の世界。進路に悩んだ時「芸術そのものを探究しよう」と決め、研究者の道を選んだ。14年に『造形、その消失において─マルセル・デュシャンのチェスをたよりに』で美術手帖の第15回芸術評論募集に入選。美術評論家として歩み出した。
○…7つの大学で講師を務めながら執筆活動や美術館のトークイベントに登壇するなど多忙な毎日を過ごす。「休日」と呼べる日はほとんどないが、仕事の合間を縫って芸術に触れたり、本を読む時間が息抜きにもつながっているようだ。
○…美術史を研究していると、百年前のアーティストの言葉が胸に響くことがある。「自分たちの活動や歴史を綴り、一つの文化として後世に伝えていくことには意味がある。この本がそんな一冊になれば」。穏やかな目で呟いた。
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