第28回日本ミステリー文学大賞の新人賞に市内で法律事務所を経営する弁護士で、日本弁護士連合会の副会長でもある衣刀信吾(いとうしんご)さん(本名=伊藤信吾さん、相模原市在住)の作品が選ばれた。今月1日に一般財団法人光文文化財団が発表した。
同賞は新しい才能と野心にあふれた新人作家の発掘を目的とするもので、応募総数205編の中から衣刀さんの作品『午前零時の評議室』が選ばれた。月村了衛さん、辻村深月さん、湊かなえさん、薬丸岳さんが選考委員を務めた。
評議室とは裁判員裁判において議論が行われる場所。同作品では、裁判員に選ばれた主人公の大学生が通常の裁判員裁判とは異なる異例の事態に直面する。裁判や事件が身近な弁護士だからこそ書けるリアリティのある作品になった。
架空の地名を物語の舞台にしているが、相模原市民がよく知る場所が登場するという。
きっかけはコロナ禍
「ドキドキ感が好き」。衣刀さんは幼い頃からミステリー小説を好んで読んでいた。
小説家を志していたわけではなく、コロナ禍で時間に余裕ができた際に小説を書き始めた。弁護士として数々の文書を作成してきたので文章を書くことへの抵抗はなかった。インターネットなどで小説の書き方を大まかに調べ、最初に書いた作品が同賞の最終選考に残った。
それから3年連続最終選考に残り、今年初めて新人賞を受賞した。「今年は年齢的にも最後のチャンスかもしれないと思っていたので嬉しかった。原稿用紙500枚ぐらいあるので書けただけでも嬉しい」
弁護士でもある衣刀さんは電話がかかってこない早朝に原稿を書くことが多い。早いときでは午前4時台から原稿に向かうこともある。
今年は1月頃に原稿を書き上げ、ゴールデンウィーク明けの締め切り日までおよそ4カ月かけて推敲した。
不思議さを追求
作品の中で描かれる事件には、被害者の靴下が片方だけ持ち去られたという不可解な謎がある。衣刀さんは「私が書くのは本格ミステリー。批判や社会的目的はなく、『不思議さ』を考える」と話す。
日頃から「こんなことあったら不思議だな」ということを思いつくとメモをする習慣がある。寝ているときにアイデアを思いつくと、その場でスマートフォンを使って原稿を書き進めることもある。「え?そうなるの?と読者を驚かせたい」
整合性を保ちつつ不思議な展開を考える過程は「胃が痛い」というが楽しいところでもある。「弁護士は後始末のお仕事。一方小説は想像力を使ってゼロから作り上げる。使う能力が違うから面白いけど大変」
『午前零時の評議室』の単行本は来年3月中旬頃に出版される予定。
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