今年の上溝夏祭りで渡御する神輿12基、山車8基の中で最も古い神輿を担ぐ「上溝五部会」。今回は、同会の大当番(リーダー)を務める根岸利昌さんと同会の神輿の担ぎ手「い組神輿連」の会長・川村直樹さんに同会の歴史とともに、祭りへの熱い思いを聞いた。
同会の発祥は神輿と同じく江戸時代に遡る。当時は、現在の田中自治会、本久自治会、元町自治会に存在した5つの集落(田中、本郷、久保ヶ谷戸、下宿、堂ヶ谷戸)が集い、神輿を担いでいた。その後、明治時代になると、この5つの集落で現在の消防団「い組」が組織され、戦後、「第一分団第五部」となり、今に至るという。複数の地区が一つになり、会を組織しているのは上溝で五部会だけ。3地区それぞれの自治会長が毎年順番に務める大当番という役どころがあるのも同会ならではだ。
今では、上溝最古の神輿を守る随一の大所帯となった五部会も、数十年前には人手不足で苦しんだという。上溝生まれ上溝育ちで、小3の頃から神輿を担いでいる川村さんは、「20代の頃は本当に辛かった」と振り返る。夏の日差しが照りつける中、少ない人数で交代しながら2日間神輿を担ぎ、氏子廻りを成し遂げるのは並大抵のことではなかった。そんな中、苦しい状況を打開したのは、神輿渡御の運営方法の変革だったという。当時のメンバーで市外で開催される様々な祭りに出かけ、担ぎ方を基礎から学び、良い所を取り入れた。メンバー手作りの給水車を導入したのもこの頃。伝統を重んじながらも、時代に合わせて新しいことを取り入れ、担ぎ手の負担を軽減することで楽しめるよう工夫を凝らし、組織の基盤を固めた。HPなどでの会の広報にも尽力。「最古の神輿を持つ会として祭りをけん引しているという意識があった。みっともないことはできない」と川村さん。現在は、担ぎ手、裏方含め毎年150人を超える人が会を盛り上げる。
今年は、多くの地元住民の協力を得て34年振りの大改修を竣功させた神輿で臨む五部会。根岸さんは、「歴史ある会として祭りを引っ張り、上溝地域全体を元気にしたい」と意気込みつつ「昔は祭りを『おてんのうさま』と言っていたように、地域の安寧や健康、幸せを願う意味があったが、今ではイベント的な意味が強くなっている。今一度、本来の意味を考える機会にしては」と語る。
一方、川村さんは、「戦前に行っていた亀ヶ池八幡宮に全地区の神輿が集結してから氏子廻りに向かう風習を復活させたい」と今は亡き友人と語り合った夢を口にする。まさに原点回帰だ。
地元の人たちによって受け継がれてきた歴史ある上溝夏祭りだからこそできること。それは、伝統を守りつつ、時代にあわせて新しい試みも取り入れ、育て、次の担い手に引き継ぐこと。そんな姿を垣間見ることができるまたとない機会がもうすぐ訪れる。
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