県立弥栄高校に通う田久保萌夏さん(2年)が1月15日、川崎市の昭和音楽大学ラ・サーラ・スカラで行われた「第19回ショパン国際ピアノコンクール アジア大会」に出場し、高校生部門で金賞を受賞した。「人を笑顔にできるようなピアニスト」を志す田久保さんは、「将来世界で活躍したい」と意気込んでいる。
同大会は、名を冠する作曲家・ショパンをはじめ著名な音楽家を輩出するポーランドの音楽への理解を深めることを通じ、国際レベルの優れた演奏家を発掘、育成することを目的としている。同国をはじめとする名だたるピアニスト・指導者が審査員として招へいされており、国内でも特に権威ある大会として知られている。
田久保さんは同大会に小学1・2年生部門で初めて出場し、過去には中学生部門で金賞を受賞した実績を持つ。一方、自信を持って臨んだ昨年の高校生部門では銀賞という結果に。今年の大会は、その悔しさをバネに「もう金賞以外はいらない」と並々ならぬ思いで臨んでいた。
大会は地区予選から始まり、ショパンだけでプログラムされた課題曲を演奏する全国大会、アジア大会へと進む。大会に臨むにあたっては、「1週間前から食がのどを通らなかった」と話すほど緊張していたが、それを力に変えて昨年の雪辱を晴らした。田久保さんは「金賞で名前が呼ばれてびっくりした。まわりに『おめでとう』と言われてやっと実感しました」と笑顔で振り返った。
曲を「1枚の絵」にイメージ
田久保さんがピアノを始めたのは4歳の頃。他人に会うと泣き出してしまうほどの人見知りの性格を心配した両親が、自宅近くの音楽教室に通わせたことがきっかけ。小学校入学時までは体操や水泳、英会話など別の習い事も経験したが、厳しくも温かい講師に出会い、「自分の感情や思いを表現できる」ピアノにどんどんのめり込んでいった。
小学3年時には、国際的なピアニストを数多く輩出している「昭和音楽大学附属ピアノアートアカデミー」に入り、主任講師の江口文子氏に師事。現在も弥栄高校音楽科に通いながら、土日は同アカデミーでレッスンを続ける。自宅にはグランドピアノやアップライトなど3つのピアノを持ち、時間があれば鍵盤と向き合う毎日で、「1日でもピアノを弾かないと弾きたくなる。気づけば夜中まで練習していることもあって、よく親に注意されちゃいます」と苦笑いを浮かべる。
そんな練習の虫である田久保さんは、ピアノを弾く際、その曲を頭の中で「1枚の絵」に例え、表現する。その絵の印象から外れず、自己満足にならないように演奏することを重視し、今大会でもショパンの生き様などを絵で思い浮かべ、音に乗せた。「私はショパンの音楽がすごく好きで、ほかの作曲家にないメロディーを持っていると思う。その気持ちを少しでも伝えられたことが今回の結果に繋がったのかな」
「誰もが楽しめる音楽を」
趣味で有名曲のアレンジや作曲も行っている田久保さんは、将来プロのピアニストをめざしている。今のクラシックは「少し聞きにくい」と感じており、年齢に関係なく誰もが楽しく聞けるようなコンサートや音楽の場を創出したいと意気込む。今大会を金賞で終え、今後は、ポーランドの首都・ワルシャワで5年に1度開催されており、90年近い歴史を持つ「ショパン国際ピアノコンクール本大会」への出場を目標に据えた。「まだまだ上にはいけないと思う。もっとレパートリーを増やして成長していかないと」。ピアノを愛する気持ちと飽くなき探求心で世界をめざす。
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