「世界のどんな場所に生まれても、子どもたちが自分の可能性を追求できる社会を実現すること」。これをビジョンに掲げ、緑区藤野を拠点に、世界の子どもたちの教育を支援するNPO法人Class for Everyone。日本で使われなくなったパソコンやスマホ、タブレットなどを途上国に寄付するなどして、子どもたちの学習機会を創出している。代表を務める高濱宏至さん(34)の思いに迫る。
高濱さんと途上国との出合いは小学生の頃。当時10歳だった高濱さんは、報道写真「ハゲワシと少女」を目にし、自分の知らない世界があることに衝撃を受けた。中高時代はパレスチナ問題を学び、大学でも国際政治学を専攻。「いずれ世界を見る仕事をしたい」という強い思いを抱き、まずは必要なスキルを得るためIT企業に就職。2年ほどシステムエンジニアとして勤務した後、大学時代何度か訪れていたフィリピンへと渡り、インターネットの可能性を探った。
スラムでの出会い
フィリピンで過ごす中、スラム街の縁石で勉強する少女に出会った。高濱さんの「なぜ外で勉強しているの」という問いに、「電気の点かない家の中より外が明るいからだよ」と当たり前のように答えた少女。「彼女がもし違う環境に生まれていたら、どんな生活を送っていたんだろう」。2012年、高濱さんは、友人らの使っていないパソコンを集め、クラウドファンディングで募った資金で子どもたちがパソコンを自由に使える施設をスラム街に作った。これがNPO法人としてのスタート。その後、他の国や団体からもパソコンを使った教育の要請が来るようになり、パソコンの寄付に協力してくれる日本企業を見つけ、橋渡しをするように。現在では、協賛企業は56、連携NGOが49。これまでで30カ国に5000ほどのデバイスを寄付した。「生まれた場所や性別に関わらず、子どもは夢を追うことができる。そんな社会にしたい」
パソコンの寄付から始まった同法人だが、現在は、自然エネルギーの発電事業にも積極的に取り組む。14年、高濱さんはフィリピンで停電を伴う大型台風を経験した。電気がなければ、デバイスも使えない。そこで、自然エネルギーの普及活動を行う地元グループ「藤野電力」と協力し日本で集めた中古のソーラーパネルを再利用して、現地で電気を作るプロジェクトを始動。現在は、アフリカの非電化地域を中心に行っている。
さらに、山奥などアクセスの悪い地域に住む子どもたち向けの教育にも力を入れる。こういった地域では、少女たちが若年妊娠により途中で教育を断念する傾向が見られる。そこで、移動図書館で地域を循環しながら性教育プログラムを実施し、少女らを支援している。
世界を身近に
高濱さんは、学校などで講演会をする中で、世界の現状を知らない日本人が多いと感じているという。だが、世界を知らなければ、現状の問題は見えてこない。高濱さんは、「SDGsは細かく目標が分かれているので、まずは自分がどれに貢献できるか見つけてほしい。それが、世界を身近に感じるきっかけになれば」とメッセージを送った。