アジア太平洋戦争をテーマに活動する区内出身・在住の写真家、江成常夫さん(83)が約10年にかけて撮影した被爆者の遺品などを収めた作品145点が日本人写真家として初めて、米国のテキサス大学オースティン校付属機関のブリスコー米国史センターに収蔵された。作品は今後、同センターの反核展に展示されるほか、学術資料として戦史の研究教育に活用される。
江成さんは世界中の戦禍に巻き込まれた人々や、その痕跡を40年以上撮影し続けている。主にアジア太平洋戦争に関わる広島、長崎の「原爆」をはじめ、旧満州に取り残された戦争孤児や、米軍兵と結婚後、海を渡った戦争花嫁などをテーマとして重点的に扱っている。
今回、同センターに収蔵されたのは、2019年6月に発表した写真集「被爆 ヒロシマ・ナガサキ いのちの証」に収められた作品、全145点。これらの作品は江成さんが約10年にわたり、広島平和記念資料館や長崎原爆資料館、被爆した建物に足を運び被爆者の遺品や遺構を撮影し続けたものだ。戦争の凄惨さを極限まで表現するため、声なき亡くなった人の無念、原爆の醜悪さを語らせようと遺品などを題材に選んだ。
写真は被爆し、亡くなった人が当時身に着けていた衣服や腕時計、熱で変形したガラス片、爆風で崩れ落ちたまま保存されている小学校の跡地などの被害を克明に記録。原爆により肉体が消滅してしまった人たちの「不在」を、遺品によって「視覚化」させる固有の表現手法をとっている。江成さんは写真集について「犠牲になった人々への鎮魂と命の尊さ、核廃絶への願いを込めた」と話す。
「単なる記録ではない」
作品を収蔵する同センターは米国の歴史をテーマに記録写真や映像、公的文書などの資料を収集、保存している。今年は「反核」に関する展示会を企画するなど核保有国の米国では珍しい、非核化活動を行っている。同展示会に携わる日本人関係者が参考資料として江成さんの作品集を同センターに提出した際に「単なる記録写真とは違ったインパクトがある」と高く評価され、全作品を収蔵する運びとなった。
米国では原爆投下が第二次世界大戦の終結を早めたとして、正当性が広く信じられている。江成さんは「核廃絶と向き合った写真集が米国で受け入れられた意義は大きい。作品に込めた反核のメッセージが広がり、次の世代につながれば」と期待を寄せている。
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