国をあげて「デジタル社会の実現」に向けた取り組みが進むなか、市内でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きが見られるようになった。導入でどのようなメリットがあるのか。専門家の意見や企業の実績を紹介する。
専門家に聞く
「データやデジタルを用いて新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出すこと。プロセスの再構築です」。相模原商工会議所が主催するDXに関する講座で講師を務める牛(ぎゅう)冰心(びんしん)さん(神奈川経済専門学校/緑区東橋本)は、DXについてそう説明する。そのメリットは多岐にわたり、「生産性の向上、経費の削減、時間短縮、効率化などにつながり、働き方改革にもなる。ビジネス全体を大きく変革できる取り組み」と話す。
同会議所は今年度から、会員へのDX推進支援に力を入れており来週6月10日(金)にもイベントを開催する(7日(火)まで受付)。「午後4時に仕事が終わる」というフィンランドの例を本にした堀内都喜子さんを招き生産性を高めることの重要性を紹介してもらう。「日本で実際4時にあがるのは難しいですが、そういう考え方があることを知ってもらいたい。DXについては企業の関心がとても高いと感じている。今後も導入支援のメニューを展開していく」と担当者は説明する。
具体例は
具体的な導入例はどのようなものか。DX推進に力を入れる税理士法人りんく(共和)に聞いた。同法人では昨年からクライアントに対しその会社の業務に沿ったRPAを作成し提供することで、より生産性の高い業務へシフトすることを促している。RPAはロボティックプロセスオートメーションの略で、DXを進めるための手段のひとつ。単純作業や反復作業をデジタル、ロボットに代行してもらうというものだ。「人がやらなくてもいいことはデジタル、ロボットに任せ、その分できた時間で人にしかできないことをする」と同法人の小久保忍社長は話す。
例えば集計・統計処理、入力・転記作業などを「24時間365日稼働可能」なロボットが代わりに行う。ロボットは記憶をなくすこともなく、転記ミスもしない。同法人でも自社の業務にRPAを導入することで作業を自動化し、それにより生まれた時間をうまく活用できたことで「数年前と比較し一人あたりの売上高の向上につながった」そう。「1日10分でも1カ月で数時間、1年だと数十時間になる。その時間は大きい。DXは仕事のやり方を変えましょう、ということでもあります」
必要性は
そもそもなぜ、企業にDX化が必要となるのか。都内上場企業ならまだしも地方の中小企業も導入すべきか。
牛さんは「全体的にデジタル技術が進化するなかで、あらゆる業種でこれまでなかった商品やサービス、ビジネスモデルの新規参入が起きている」とし、そこでの競争力をつけるための方法のひとつがDXという。「ただ、DXは会社全体の従来のシステムを変えるというもの。推進するにしても、俯瞰で会社を把握し、見ることができないと難しい」と課題を指摘する。一方、小久保社長は中小企業での導入について「特に製造業は業務も複雑で、複数のシステムを入れていることも少なくない。そのため本来の仕事とは別のところに時間を取られることも多い。DXで仕事を効率化ができると考えている」と話した。
今後、DXが浸透するために、牛さんは「社会全体の理解が不可欠」という。例えに自動車の自動運転を挙げる。「各社が自動運転の車を作って売っても、社会全体がそれを受け入れなければ、安心に使えるかわからない。つまり、技術の進歩とともに、社会の理解があってはじめてDXは推進される」と話した。
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