生物多様性を伝える小学生向けの講座で講師を務めた麻布大学獣医学部の 大石 元治さん 淵野辺在勤 43歳
軸ぶれず、歩む研究道
○…長さ5mを超えるアナコンダ、存在感たっぷりのゾウ、今にも泳ぎだしそうなバンドウイルカ。全身骨格標本が展示される麻布大学の「いのちの博物館」で開かれた小学生向けの講座で講師を務めた。「動物たちの骨を通じて種の多様性を感じてもらうことができたらそれで十分。標本に触れることができるのがこの博物館の特徴。何かを感じてもらう機会になったかな」
○…和歌山県新宮市の出身。「何もない『ポツンと一軒家』状態」の兼業農家に生まれ育った。自然豊かな環境で生きる中、生物に興味を抱いた少年は大学進学を控え「生物」を学ぶことを軸に考え、獣医学部をめざした。「『獣医になりたい』というよりは生物に興味があった」
○…18歳の青年はサークルは性に合わないと、1年生から参加できる研究室があることを知り所属したのが、「解剖学研究室」だった。大学院を修了するまでの10年を研究室で過ごした後、すぐに助教となり、現在は母校で講師を務める。専門とするのがチンパンジーやオランウータンなどの大型類人猿。種が生きる環境によりその機能が異なる。これまで研究者の間でもあまり目が向けられていなかった前肢に注目する。大学院時代から進める研究テーマは研究者人生を終えるまで一貫する考えだ。
○…同じ研究室に所属していた同級生と結婚し2人の子どもと暮らす。「感覚派の妻と論理的思考の研究者の夫。研究者という生き物を知ってくれているから、助かる所がたくさんある」。度々「運が良かった」と口にするが、「好きなものを探究しつづける力と享受する力」に人間性を感じさせる。生物への興味が高じて歩み始めた学びの道は、生涯を歩む道だった。
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