文楽協会技芸員・人形遣い 小川 卓也さん(桐竹(きりたけ)勘介さん) 緑区日連出身 18歳
歩み始めた300年の道
◯…それはウルトラマンや仮面ライダーのようなヒーローだった。毎年、近所の大石神社で行われていた人形浄瑠璃の公演。幼稚園児の時に見た”人間以上に表情豊かな”人形に、心を奪われた。「その時から人形遣いになりたいと思いました」。15歳にして、300年の伝統を誇る文楽(ぶんらく)の道へ。現在は足遣い(あしづかい)の1人として、3年目の舞台を踏んでいる。明後日20日(土)には地元(杜(もり)のホールはしもと)での凱旋公演を控える。4年前の同ホールでの公演は、客席から眺めていた。
◯…2003年に廃校した藤野町立篠原小学校の出身。過疎化が著しいエリアで、入学式は何と1人。5人の先輩に迎えられた。「先生の方が多かった。みんな友達で楽しかったです」。そして中学のとき、真剣にその道を志すように。文楽関係の本を読みあさり、公演に足を運んだ。夜行バスを使い、1人で大阪の文楽座にも。「ずっと言っていましたから。夢を捨てなかったんだなって」(母・瑞穂さん)。中学校の許可をもらい、在学中から、舞台を手伝った。卒業後、晴れて文楽協会に入門。”桐竹勘介”として、門出をきった。
◯…大阪で暮らし、1年のほとんどは公演に追われる。すっかり関西弁も身についた?よう。まわりは全て男性。約80人の先輩に囲まれ全国を旅する。休みの日は義太夫節(ぎだゆうぶし)を流しながら部屋掃除。文楽漬けの毎日で、最近は地元の同級生との会話がちぐはぐに…。
◯…足遣い10年、左遣い10年と言われる人形遣いの世界(それで主遣い(おもづかい)になれる)。会話ができない舞台で、主遣いは腰でサインを送る。足遣いはその筋肉の動きを察知し、人形の動きを読む。動きのない場面では、1時間ずっと同じ姿勢でいることも。「楽しんでやっています。(一番年下なので)いじってもらいながら」。目標は色々な人形を扱えるようになること。「今はがんばるしかないですから」。若者はこれからの300年を歩み始めた。
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