タイの立憲革命を牽引し、亡命後は南区御園でも生活していた元同国首相のピブン・ソクラーム氏(以下ピブン氏)らの半生に迫った映画「フレネミー〜プリーディーとピブン〜」の制作が、市内での撮影を皮切りにスタートした。ピブン氏については市内で生活していた理由などが明らかにされていない。映画の撮影に協力し、同氏の研究をしていた作家の故大野力氏の親族らは、ピブン氏の謎に光が当たることへ期待を寄せている。
ピブン氏は第二次世界大戦前から戦後にかけて活躍した政治家。1932年にはプリーディー元首相らと共闘して当時の絶対君主制を打破し、タイ(当時シャム)に立憲政治をもたらした。その後2度にわたり首相を務めたが、1957年に軍によるクーデターに遭い、カンボジアを経て日本へ亡命。最後の1年は区内の御園に移り住み、66歳で生涯を終えた。
日本での研究が形に
今回の作品を手掛けるのはタイでCMや映画などの監督を務めるパサコーン・プラムオン氏。同氏は、国内外で重要な役割を果たしたピブン氏について、素性や人間性に触れられる機会が少ない現状に着目し映画化を決意。ピブン氏と同じく首相を務め、青年時代からの友であり政敵としても語られるプリーデイー氏とあわせて謎に包まれた生涯を解き明かしていく構成を着想し、タイトルにもその意図を込めた。
映画の制作に踏み切ったパサコーン氏だが、ピブン氏の晩年について断片的な情報しか持っていなかったため、日本に住むタイの研究者らに相談。そこから、相模原市国際交流協会発行の機関紙に掲載されたピブン氏に関する記事にたどり着いた。執筆したのは生前、ピブン氏の亡命生活を研究し、書籍化の夢半ばで亡くなった作家の大野力氏の義弟の田所晋さん(御園在住)だった。
それを知ったパサコーン氏は昨年6月に来日し、田所さんと面会。大野氏が残したピブン氏に関する緻密で膨大な資料に感動を覚えたという。その後、日本での撮影を決意して日程調整を進め、今月7日、ピブン氏が訪れたとされる相模原公園から撮影をスタートさせた。翌8日には田所さんらへの取材を通じ、ピブン氏の暮らしについて証言をカメラに収めた。田所さんは「義兄が作り上げた資料を形にするのは私の使命。映画という形で資料が陽の目を見て本当に嬉しく思う」と笑顔を見せた。一方、パサコーン氏は「タイの政治が混迷を極める現在、国民が政治を考える契機になればと思っている」と作品に込めた思いを話した。
映画は、来年中頃にタイ国内で上映される予定。現在、日本での上映予定はないが、パサコーン氏は「日本でも是非上映させたい」と意気込んでいる。
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