相模原市が2023年度中の制定を目指す「人権尊重のまちづくり条例(案)」の骨子が公表され、市は1月9日までパブリックコメントを実施している。骨子には市人権施策審議会が3年半かけて作成した答申内容が反映されていないとして、市民団体などから抗議や修正を求める声が相次いでいる。
市が発表した条例案の骨子は、人種、民族、国籍、信条、年齢、性別、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、障害、疾病、出身その他属性を理由とする不当な差別的取り扱いを禁止する。差別を受けた側は、市長に対し、助言やあっせんを求める申立てができ、差別を行った側が従わない場合、市長が勧告することができる。外国にルーツを持つ人(本邦外出身者)に対する市内の公園や広場など公共の場でのヘイトスピーチ(不当な差別的言動)を禁止。また、市長が深刻な差別と認める場合、声明を出す仕組みが盛り込まれた。
「怒り覚える」
一方で、答申の内容が反映されていないと、市民団体から抗議が相次いでいる。
今年3月に市人権施策審議会が提出した答申では「津久井やまゆり園事件」をヘイトクライム(差別が動機となる犯罪)と位置付けたが、前文では「大変痛ましい事件」という表現に置き換えられた。市は「『ヘイトクライム』に確定した定義がない」ことを理由に挙げている。
答申で求めた悪質なヘイトスピーチに罰則を科すことについて、市は「市の実態を踏まえ、罰則を科すまでには当たらない」との考えを示し、罰則はなく、氏名の公表にとどまった。さらにヘイトスピーチの対象を外国にルーツを持つ人に限定し、答申で求めていた障害者などを含めていない。また、第三者機関として被害者の救済機能を持つ「相模原市人権委員会」については、市長の諮問なく、調査審議などが行なえるよう提案されたが、骨子では「市長から意見を聴かれた場合において」とし、独立性は採用されなかった。
これを受けて、反差別相模原市民ネットワークなどの市内団体、外国人の人権団体、障害者団体などが市に対し骨子への抗議と修正を要請。「答申をほぼ完全に無視、その精神を全く生かしておらず、怒りすら覚える極めて残念な内容」と強く批判した。同団体の田中俊策事務局長は「やまゆり園事件は差別に基づく犯罪だということを市が位置付けなければ、何も意味がない」と語る。市はパブリックコメントを実施後、市議会へ提出。4月の施行を目指す。
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