家族介護者の情報交換の場を提供する「ケアラーズカフェモンテステラ」(相模台)が3月14日、神奈川県の「かながわボランタリー活動推進基金21ボランタリー活動奨励賞」を受賞した。自宅を開放した地域の居場所づくりが「『できることから始める』という活動姿勢を示し、他者の共感を得る」と、高く評価された。
ケアラーズカフェモンステラは、家族の介護に携わる人が悩みを打ち明けられるようにと山田由美子さんと夫の豊徳さんが2018年11月に開所した。山田さん自身も15年間にわたり認知症の母を介護した経験を持つ元ケアラー。「介護経験者だから共感できることがある。友人関係ではないからこそ、さらけ出せることがあると思う」と開所の意義を語る。
運営は山田夫妻とボランティアのスタッフが担い、毎週火曜日と土曜日に自宅1階を開放する。介護事業所が焼くパンや山田さんが作るランチの提供、子どもから高齢者まで集う「多世代交流食堂」を開催している。
これまでに訪れた人は延べ8千人以上。近隣住民だけではなく、片道2時間かけて定期的に訪れる人もいるという。
「何も考えず」
山田さんがコミュニティの場として自宅を開放したのは2016年。当時、介護生活からうつ病を発症していた。「何も考えずに始めたのが正直なところ。『どなたでもどうぞ』という思いから」と振り返る。子ども時代に母親が近所の人をよく自宅に招いていたことから、家に人が集まることは自然なことだったという。
活動を始めて気が付いたことは「介護者が意外と多い」ということ。山田さんは「ケアラーは介護からちょっと切り離した自分の時間が必要。自分の経験が役に立つなら」と、介護者のためのカフェを開所した。
子ども、若者に
山田さんは現在、大人の代わりに家族の介護や世話などを日常的に担うヤングケアラーの支援に力を注ぐ。小中高生や支援者に向けた啓発冊子を作成し、ヤングケアラー・若者ケアラー(18歳以上)の居場所「ハレレア」を5月、新たに開所する予定だという。
相模原市が22年に行った調査によると、「家で家族のために世話や家事をしている」と回答した市内小学生(5、6年生)と中学生は全体の1割を超えた。山田さんは「本人が自覚すること自体が難しく、ヤングケアラーは見つかりにくい」と指摘。同所に当事者が来たことはないという。
山田さんは「元ヤングケアラーの人と話すと、心を守るために何も感じないよう、感覚を鈍らせていたように感じる。『あなたらしくいられる場所がある』とみんなに知らせたい」と訴える。
同基金は県が、地域や社会の課題解決に主体的に取り組むボランティア団体等の活動を支援するもの。地域社会への貢献度が高く、さらに継続発展が期待できる団体に「ボランタリー活動奨励賞」が贈られる。23年度は5団体が選ばれた。
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