障害者施設「津久井やまゆり園」で元職員による殺傷事件が発生してから5年を迎えるのにあたり、20日に追悼式が実施された。今年は千木良に完成した新園舎で初めて行われ、関係者らが参列し献花や黙とうを捧げた。主催は神奈川県と相模原市、社会福祉法人かながわ共同会。
同園の元職員が入居者19人の命を奪い、社会に衝撃と不安をもたらした事件から、26日で5年を迎えた。同園は事件が起きた千木良の施設から、2017年4月に横浜市港南区の芹が谷に仮移転。同年10月には、再生計画が策定され千木良と芹が谷を両拠点とすることが決定し、千木良の施設は建て替えが行われていた。
追悼式は例年、7月に相模女子大学グリーンホールで行われていたが、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止に。2年ぶりの開催となった今回は、完成した新園舎で執り行われた。
追悼式には黒岩祐治県知事、本村賢太郎市長をはじめ、同園を運営するかながわ共同会の山下康理事長、7月から園長を務める永井清光さん、同園家族会の大月和真会長ら関係者が出席。新型コロナウイルス感染症の対策として、一般参加は見送られた。
黒岩知事は「障害者当事者の皆さんが自ら幸せを実感できることを最優先にする『当事者目線の障害福祉』の実現をめざして取り組んでいます。対話を通じて、じっくりと耳を傾けていこうと思っています」と式辞を述べた。本村市長は哀悼の意を表し、「こうした悲惨な事件が二度と起こらないようにするためにも、事件の記憶を風化させることなく、一人一人が障害のある方への理解を一層深め、相互に人格や個性を尊重し合う偏見や差別のない共生社会を築いていくことが私たちの使命」と誓った。
式檀にはやまゆりの生花と同園利用者が哀悼の意を込めて折り紙で折った19色の「やまゆり」の花束、故人を偲んで描いた絵が飾られ、参加者は黙とうを捧げていた。
追悼式後には黒岩知事や本村市長をはじめ、関係者が正門前の広場に新しく創設されたモニュメントへ献花を行った。
モニュメントは事件を風化させないことと併せて、事件で命を奪われた利用者への鎮魂のために県が整備。遺族や利用者、家族会、施設職員からの意見を取り入れたデザインとなった。中心にある器は月命日には水で満たされ大きな水鏡となる。周りから水が19本流れ落ち、底面には「ともに生きる社会かながわ憲章」が彫り込まれた。献花台には「やまゆりの花」の絵が彫られており、遺族の同意を得られた犠牲者7人の氏名も添えられている。午後からは一般献花が行われ、地域住民が訪れ花を手向ける姿が見られた。
支援につながる教育
黒岩知事は同園を「地域移行」を前提とした施設と位置付け。「以前までの大規模施設から、少人数単位での生活で入居者本人の意志を尊重した施設へと変わった」としている。また地域の中で、障害者へ適切なサポートができる人材の育成も行う。
本村市長は記者会見で、「市民に同園の存在と、新しい生活が始まったということを理解していただく。今回の事件についても風化させない取り組みを引き続き行っていく」とコメント。今後は「市内の小中学校で、障害者への支援や理解につながるような教育をはじめ、人権教育についても力を入れていく。共に支え合い生きる社会を実現する」と宣言した。
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